第1章 まぼろし
そのままリーダーと喋ってたら、
「おはよー…」
って、超機嫌が悪い翔さんが入ってきて。
…なんか、珍しい。1番遅いのも、機嫌悪いのも。
みんなそんな気配を感じてか、黙っちゃって…
マネージャーが声をかけに来た時も、
楽屋のピリつき方にちょっとビビってたのが笑えた。
メイクの順番待ちをして居るときに、いつもの連中から連絡が入る。
『今日、メシ行こうぜ』
いつもだったら、速攻OKするんだけど。
…なんか今日は、気が引けて。
ちょっと迷ってる自分に、戸惑う。
…だって、別に何の約束をしていたわけじゃない。
ただ、ただ俺が。
…ニノと一緒に入れたらなぁ、なんて。
そういうこと、思っちゃっただけだから。
『いいよ行こうぜ。仕事終わり直で六本木行くわ』
『了解』
でもこういう風に、
いつもと何ら変わりのない日常を送るのが、
きっと平和、なんだろうな。
少しだけ感じた、
ニノに声をかけなかったことの後悔とか、
自分の気持ちいん正直に生きてないんじゃないか、
なんていう自問自答なんて。
今は、なんにも気づかないフリをしておこう。
それと向き合い始めたら、
なんだか厄介な気がするから。