第1章 まぼろし
ハジメテ飲んだあなたのそれは、正直まずくて。
でも、貴方の真っ赤な顔を見たら、そんなのどうでもよくなってしまった。
かわいいから。
男を誘惑するのなんて、慣れっこだった。
ちょっと顎を引いて、口を半開きにして舌を出して、
その舌でぺろっと唇をなめたら大体イケる。
大抵のオトコはイチコロだ。
でもね、なんとなく。
なんとなく、貴方にはそんなのが通用しないような気がしたんだ。
どこまでも真っ直ぐな貴方には。
だから、
だから、正直に誘ってみることにしたよ。
「シよ?」
驚きでパッと開かれた貴方の瞳。
「え…でも…」
「酔ってるんでしょ?潤くん。」
そう、貴方は酔ってる。だからだよ。
だから、こんなことしちゃうんだよ。
「…う、ん…」
「じゃあ、全部酒のせいだから…」
全部酒のせいだ。
安っぽい宣伝文句みたいな言い訳をして、
俺は服を脱いだ。
もう、そこからは戻れないと知りながら。
もう、ただのメンバーとして、潤くんを見れないことを知りながら。