第5章 捨てるもの
陽暮side//
【カランカラン…】
閉店となったあんていくにわざと訪れた。
店内に人は少なく、男が二人話をしていた。
「・・・あの、すみませんがもう閉店なんですよ」
芳村さんだった。
芳村さんとは父が知り合いで何かと良くしてもらったり。
「…って、陽暮ちゃんじゃないか」
「え…店長、この方知ってらっしゃるんですか」
彼は多分…金木研。
悲劇が起こった割には冷静を取り戻しているようだった。
「芳村さんにお伝えしたいことがあって来たんです。
あと……眼帯の彼。にも…会いたくて」
芳村さんは驚く彼を横目で見て全てを悟ったように二階へ向かった。
【ガチャ…】
ソファーに腰をかけて彼は終始目を泳がせていた。
「まず、芳村さんにお伝えしたいことからお話しますね」
私はあの日の悲劇を、母の事を話す。
「何かな?」
芳村さんはそっと笑って問いかけた。
今から話すことは、まるで私が母を裏切ったようで…芳村さんを裏切ったようですぐに口に出せなかった。
重い口をゆっくり開けて大きく息を吸う。
「つい、2ヶ月程前…
私が…母を、殺しました。」