第6章 左眼の隻眼
歩いて、飛んで、走って、ようやく懐かしいと言っていいのか分からないがアオギリのアジトに着いた。
「タタラさん…チッ…ヤモリ…お前もいたのか」
「ヤ…モリ…?」
聞き覚えのない名前と初めて見る『大きい』としか言い様のない彼に戸惑った。
「そういえば君は僕の事を知らないんだね。
ヤモリだ。よろしく」
大きいくせしてやさしい口調に顔がひきつりながらも差し出された手を取って軽く握った。
ギギギ…
「ってぇっ!!」
握手のヤモリの手に骨は砕け散るほどの力が込められた。
「う~~ん…いいねぇ、その顔ッ!!」
すぐに手を離して包帯で巻かれた手の平をそっと触る。
それだけでも痛みを感じる。包帯を取って手の歪な形を目の当たりにすると彼の『力』を改めて感じる。
「…陽暮。その包帯は一体なんなんだ」
タタラさんが切れ長な瞳で私の包帯を見つめてそっと取り上げた。
「あぁ…私、…その、隻眼…じゃないっすか」
タタラさんも知っていたんだ。と思いながら小さな声で認められないように言った。
横では『やっと認めたか』と言わんばかりに絢都君が溜息をつく。
「だから…赫子が…ここから出るんです」
私の小さな声に絢都君もタタラさんもヤモリという男も全員が目を険しく形を変えて私の瞳と包帯の巻かれた歪な手のひらを交互に見た。
「手…からか?」
タタラさんは信じられないという顔がマスクに収まりきらないようだ。
「はい…でももう一つは羽赫です」