第5章 捨てるもの
私はその日から
彼を受け入れた-喰種を-
☪48時間後☪
「え…麗來?」
「だから…私はあなたを受け入れる」
彼はただただ怯えた様子で震える右手を左手でおさえていた。
「どうして怯えるの。」
「だって…そんなの…嘘に決まってる…」
彼はただ目をうるわせて俯いた。
真冬の冷え切った手のひらで彼の頬をそっと撫でた。
「…大丈夫。私は…もうイヤなの」
「いや…?」
「もう…大切な人を自分のこの手で失うのはイヤなの」
自然と涙が頬を伝った。
「麗來…。もしかして今までに何か…」
「親友が喰種だった。」
「…っ…」
彼の頬は暖かく涙を流したのか少し濡れていた。
「私は…喰種だと知った親友をためらわず殺した。
それが正義だと思った。でも違った…。」
止まることなく溢れてくる涙は彼の涙も連れてきた。
「私が世界を変える…。
人間も、喰種も…守ってみせる」
彼の頬を撫でる手に力が入る。
彼は温かい手で私の冷たい手の力を吸い取るようにしてさすった。
「…ありがとう…」