第5章 捨てるもの
麗來side//
あの日の平紫君…怖かった。
でもそれよりも…哀しそうだった…。今に崩れてしまいそうだった。
『喰種も…愛したい』?
『愛されたい』?
『生きたい…』?
-〝生きてぇよ...〟-
ふと涙がこぼれた。
私が捜査官を目指したのは昔の友人だった。
親友だと思ってた親友が中学の時、喰種だと気づいた。
親友を『コイツは喰種だ』と証言する奴が現れたのだ。
その日、親友は真の姿を晒した。
そこで親友はクラスメイト38人中30人を喰べた。
それを止めたのは私で私が殺した。
私は『裏切られた』そう思い込んで彼女をボロボロにした。
そういえばあの日・・・
『れい…ら…』
死にそうな彼女の声に残された7人は悲鳴をあげ、私はただカッターを突きつけた。
『なによ…なによ!!』
彼女は震えた手を伸ばして私の手に近づけた。
『さわんな!!喰種のくせに…喰種のくせにぃぃぃぃ!!きもちわりーんだよ!!死ねぇぇぇ!!仲間喰いやがって…クソ野郎!クソ野郎!裏切り者!』
彼女は手を引っ込めると、かすかに言った。
『ごめんね…。ごめんね…。麗來……みんなを…助けて…』
そう言うと少し微笑んで涙を流した。そしてその瞼は二度と開かなかった。
あの彼女の戦う姿と…平紫君の戦う姿が…
重なって見えた。