第4章 利世の少年
「・・・は?タタラさん…コイツ…」
「早瀬陽暮。お前は…人間か?」
-人間か?-
そんなの…人間じゃない!!
でも…そんなの言ってしまえば…隻眼と知られたら
もっと逃げづらくなるんじゃ…!!
私は顔を上げて笑ってみせた。
「え?あははっ!びっくりするじゃないですか…。
私、喰種にみえます?」
「陽暮…」
絢都くんが警戒の目なのか、ショックな目なのか、無表情なのか、よく分からない目で私を睨んだ。
「とぼけるな。君の母が誰に喰われたのか、知っている」
タタラさんは細い目でじっと私を見つめていた。
「…そう、ですか」
再び、私の顔は下を向いた。
もう…言ってしまおうか。
そして、この夜…無理矢理でも逃げよう。
ダメなら嚇子だって…出してしまえばいい
「てめぇ…喰種だったのかぁ??」
絢都くんがキリキリと歯ぎしりを立てた。
「ふっ…そうだよー?でもだから何ー?
お母さんを喰ったやつを知ってる?
脅してるんですか?タタラさ~ん…。
私が喰ったって…なんで知ってるんですかぁー?」
「てめっ…あの女喰った…?!」
絢都くんがやたらと入ってくる。
タタラさんはずっと同じ顔で同じ眼で見つめている。
「…君が喰っていたと、証言する者がいてな」
「はぁ?!誰ですかー?!」
「言えるわけあるまい」
「あっそーっすか」
私は制服の上に着たパーカーのフードを深く被った。
「…じゃ、さよーなら。」
ガチャン
扉を閉めた奥で、絢都くんの声だけがうっすらと聞こえていた