第19章 黄瀬涼太 【R18】
全身全霊で愛すると、そして一生をかけて守ると誓った。その気持ちは今も変わらないし、むしろ彼女への愛は深まるばかり。
「涼太……」
縋るように名前を呼ぶ声に心がゆらぐ。手の中の髪を梳きながら、黄瀬は祈るように目を閉じた。
『責任を取る』と口にするのは簡単だが、万が一の時リスクを負うのは女性だ。
彼女のためならすべてを捨てても惜しくないが、それを彼女が望むとは思えないし、そもそも学生の身で一体どれだけのものを守れるというのだろう。
(オレにそんな資格があるのか)
勇気を出して踏み出してくれた気持ちが嬉しくてたまらないのに、その一線を越えてしまうことが怖くて身体が震える。
その理由はただひとつ。
──愛してる、から
「結、オレ……っ」
絞りだした声が掠れる。
黄瀬は結を腕の中に閉じ込めると、ピクリと弾ける肩を強く抱きしめた。
焦るな、と何度も自分に言い聞かせながら。
「オレ、今でもこんなに幸せなのに……これ以上望んだらバチが当たりそうで」
(……怖い)
弱気な声を飲みこむように唇を噛んだ黄瀬は、背中に回る優しい腕にハッと顔をあげた。
「たとえ何があっても……涼太、アナタがいてくれたら怖くない」
胸をくすぐる真っ直ぐな声に、くすぶっていた心が一瞬で晴れていく。
「全部、あげる……から、私にもちょうだい。感じたいの、涼太のすべてを」
瞬きする瞳からこぼれ落ちるひとすじの涙に、何度でも誓う。
何があっても離さないと
求めて、求められて、ただひとつになりたいと欲する心は、決して過ちではないのだから。
「もっと、言って。もっとオレを欲しがって」
「好き、大好き……涼太が欲しい。全部、受けとめさせて」
「……結」
無邪気な寝顔も、その澄んだ瞳も
時には迷い、傷つきながら、それでも立ちあがり前に進もうとする強い心も
すべて
「結、愛してる」
「私も……」
アイシテル
運命の恋を手に入れた。
どんなことがあっても、この命が燃えつきる最後の瞬間まで決して離さない。
頬を濡らす涙を吸い取ると、黄瀬は静かに目を閉じた結の唇に、厳かな誓いのキスを落とした。
20xx.6.18
Happy 20th birthday!
→epilogue