第19章 黄瀬涼太 【R18】
(ちょっと古いけど、“できちゃった婚”ってのもアリ……?)
自覚の有無はさておき、結を未だに溺愛する兄の鬼のような形相が一瞬頭をよぎり、ぷるぷると頭を振った黄瀬は、気遣うように頬に触れてくる手に、恭しく唇を押しつけた。
「はやく欲しいんスか?欲張りっスね」
「ち、違っ!百面相してたから気になって……」
この期に及んでも素直じゃない恋人が、腕の中でどんな可愛い声で啼くのか、ベッドの上でどんな風に乱れるのか、知っているのは世界でただひとり。
そう思っただけでイってしまいそうだ。
もちろんそんな勿体ないことをするつもりは毛頭ないが。
「結のこと考えてたんスよ」
「……ぅぐ、っ」
甘いムードを台無しにする声すら愛しくて、誰にも聞かせたくないと思うなんて、人はどこまで貪欲になれるのだろう。
(もちろん結限定だけどね)
その拗ねた声も、快楽に溺れるみだらな姿も、涙も不安ですら全部。
「さて、と」
じわりとポジションを取り、文字通りお預けを食らって限界を訴える昂りに、いざ出陣と気合いを入れる。
あんなに葛藤していたことが嘘のように、その顔は美しく、自信に満ちあふれていた。
「覚悟はいいっスか」
「……う、受けてたちます」
「さすがオレの結。そうこなくちゃ」
冗談とも本気ともつかない会話を交わしながら、自然と絡まる指と指がシーツに沈む。
もう迷いはなかった。
神様がくれた千載一遇のチャンスに胸を躍らせながら、黄瀬はこれからはじまる甘美な夜に、音もなくダイブした。