第19章 黄瀬涼太 【R18】
ボタンがちぎれんばかりに乱暴に脱ぎ捨てたフレンチリネンのシャツは、彼女が似合っていると言ってくれたさわやかな空の色。
「……結」
あらわになった上半身を形成する、鋼のような筋肉には一切無駄がなく。
暗がりの中でも圧倒的なオーラを放つ肉体を前に、声を失う恋人のシャツをまくりあげ、背中のホックを外す指はこんな時でも冷静でなめらかだ。
「そーいえば、なんでパジャマじゃないんスか?寝てていいってオレ、言ったのに」
「……」
数秒の沈黙のあと、渋々というトーンで語られる声は好物のひとつ。
黄瀬は静かに耳を傾けながら、ひとつ、またひとつと服を脱がせていった。
「乾杯くらい……一緒にしたいなって思って待ってたんですけど、その……睡魔との戦いに敗れてしまって」
ゴメンナサイと謝る思考回路は理解できないが、寝不足の原因に心当たりがないわけではない。というか、それは間違いなく自分の責任だ。
「ぷ」
「な、なんで笑って……や、ぁっ」
あっという間に全裸にされたことに恥じらう暇も与えずに、黄瀬は自分だけに許されたカラダにむしゃぶりついた。
「ホント可愛すぎ」
「ン、っ……ん」
彼女の弱い場所はあまたあるが、とびきりいい反応を見せる耳責めは外せない。
わざと音を立てながらねっとりと舐めると、イヤイヤと無意識に逃れようとする頭を抱えこみ、耳朶に歯を立て、尖らせた舌先で蹂躙する。
「も……ゃ、あっ」
「ハ……っ、ホント弱いっスね、ココ」
(結のイイとこは耳、だけじゃないけどね)
耳の下に吸いついて、攻略済みのシルシを残した唇が、次に狙いを定めた細い首に数え切れない華を咲かせていく。
「ん、跡つけちゃ……や、っ」
「ダーメ。今日はオレのいうことなんでも聞くって約束でしょ」
汗ばむ肌にキラキラと光るのは、高校生の時に彼女に贈った金のネックレス。
誕生石が光るペンダントトップを口に含み、彼女と出会えたキセキと、ともに過ごしてきた日々を反芻し、不覚にも目の奥が熱くなる。
「りょ、た……ど、したの?」
「ん、何でもないっスよ」
「でも……ん、アぁ、っ」
ベッドの上のマウントポジションは絶対に譲らない。
宝石を解放し、妙なところで敏感な恋人の気を逸らすように、黄瀬はぷくりと尖るサクラ色の蕾を吸いあげた。