第19章 黄瀬涼太 【R18】
だが人生はそんなに甘くない。
ベッドに乗り上げ、本格的に攻めの態勢に入った黄瀬の下で、なんの前触れもなく結が覚醒したのは、邪な下心を見抜いた神様のお仕置きか。
「りょう、た……?」
「あ。起きちゃった」
絶好のチャンスを逃してしまったことは悔やまれるが、やはり反応はないよりあった方が何倍も燃える。
「おはよ。じゃなくてただいま、かな」
「おかえり、なさい……じゃなくて、何してるんですか?」
「ナニって……今の状況見て分かんない?あ、でもオレの名誉のために言っとくけど、誘ったのは結だから」
「え、そう……なんですか?」
しっかり者なのに少し天然で。
頑固なのに時々びっくりするほど素直なリアクションをみせる恋人に、黄瀬は涼しげに笑った。
「そーっスよ。だってココ、もうこんなに尖らせて」
「ひゃ、っ」
可愛い恋人をもっと啼かせてみたくなるのは、単なるオトコの本能ではなく、彼女のことが好きだからというシンプルで揺るぎない想い。
どれだけ好きか伝えたい。
深く交じりあって、溶け合って、すべての細胞を自分の色に染め上げたい。
「……結」
彼女を求める劣情は、一緒に暮らしはじめて一年以上経つというのに、衰えるどころか増すばかり。
控えめだが、弾力のある形のいい乳房も
丸みを帯びて悩ましく揺れる腰のラインも
すべて自分のものだと確かめずにはいられない衝動の名前、それは──
「結の全部、オレにちょーだい?」
「……っ」
語尾をあげる口調なのに、それは許可を求める言葉ではないことを、頭のいい恋人はすぐに理解したようだった。
「誕生日プレゼント、もっと欲しいな~なんて」
ダメ?と鼻先をこすり合わせると、恥じらうように視線を外しながら「だってプレゼントなら昨日……」と言葉をつまらせる唇を、黄瀬は親指でそっとなぞった。
「昨日──なんスか?」
「ム」
負けず嫌いの唇を封印すると、黄瀬はわずかな隙間に舌をねじ込んだ。
「っ、ふぁ……ん」
舌を絡め、口内に溢れる唾液を啜り、やわらかな唇に噛みつく度に、ビクビクと跳ねる身体に湧きあがる支配欲。
息すら奪うような激しいキスに、胸を押し返そうとする手をやんわりと拘束しながら、黄瀬は身体にはりつく自分のシャツに指をかけた。