第19章 黄瀬涼太 【R18】
堪能したキスはさわやかなミント味。
起きる気配のない結の頬に、黄瀬はそっと指を滑らせた。
どれほど愛の言葉をささやいても、その身体に愛していると刻んでも、『黄瀬涼太の恋人』である限り、好奇の目やいわれのない誹謗中傷から逃れることはかなわないし、今日のような日もきっと繰り返されるだろう。
いくら仕事とはいえ、笑顔で握手に応えていた自分が情けない。
(惚れた女ひとり満足に守れなくて……何やってんだよ、オレは)
今日はひとりどんな時間を過ごしたのか。
小さなカラダにどれだけのものを背負わせてしまっているのか、考えただけで胸が軋む。
「絶対にオレが守る、だから」
──離れないで
そう祈りながら、手のひらを自分の頬に押しあて、何度もくちづける。
たったそれだけのことなのに、こんなにも満たされるのはもう彼女だけ。
一体どうすればこの焦がれるような想いを伝えることが出来るのだろう。
(あぁ、もうホント好き……)
だが、手首にくちづけて、ほっそりとした腕の内側に吸いついてもピクリともせず、ふたたび眠りに落ちようとする彼女の反応は、喜ぶべきなのか、憂うべきなのか。
「……寝ちゃったんスか?」
くうくうと寝息をたてる唇から、もっと本音が聞いてみたい。
どこにも行かないでと
誰にも触れさせたくないと
狂おしいほどに求めて欲しい思ってしまうのは、罪なのだろうか。
「……結」
隙だらけの首筋に顔をうずめ、ボディソープの香りに酔いしれながら、黄瀬は上着の裾から手をもぐり込ませた。
一度でも触れたら止められないことは分かっていたのに。
(ちょっと、だけ)
抵抗の兆しがないのをいいことに、奥にすべらせた手でやわらかな双丘をつつみこむと、かすかに揺れる腰に、疲れていたはずの身体がその先を求めてズクリと疼く。
「ん……りょ、太」
掠れた声が耳に触れたかと思うと、ピアスごと口内に含まれて、たまらず声がもれる。
「っ、く」
じゃれるように耳朶に歯を立て、ピアスを揺らす舌先は、行為の継続を許されたも同じ。
自分に都合よく解釈すると、黄瀬は手の中の膨らみをやわやわと揉みしだいた。
「やわらか……」
「ん、っ」
吸いつくような肌と、指の間でひっそりと硬さを増す先端に、強度のない理性は跡形もなく崩れ落ちていった。