第3章 東峰旭
「え。これって、もしかして……ホラー?」
オープニングでようやく気づいた映画のチョイスに、カタカタと震える身体が椅子を揺らす。
「だって東峰、何でもいいって言うから。もしかして苦手だった?」
「い、いや……平気だと思う。観たこと、ないけど」
人生初の告白をした私に、挙動不審な動きをこれでもかと披露した後、コクコクと頷いてくれたのは三ヶ月前。
だが、仲のいいクラスメイトから昇格したと思ったのも束の間、彼はボールを追いかけることに夢中でデートもままならない。
いまだに手も繋いでくれない『へなちょこ』との距離を、今日は一ミリでも縮められるだろうか。
膝の上に置いたキャラメル味のポップコーンを口に放りこむと、まだかすかに震える大きな小動物の腕に、私はそっと頭を預けた。
ガラスのハート with 東峰 旭
2017.5.19