第13章 笠松幸男 *
桐皇の今吉翔一、秀徳の宮地清志、洛山の樋口正太に、陽泉の岡村建一。
大学生になった彼らと縁あって組んだチームは、それぞれの出身校の頭文字を取ってStrkyと命名され、そしてその関係は、あの敗戦を経た今も変わることなく続いていた。
高校生という限られた月日をバスケに捧げ、同じ場所を目指して戦ってきた彼らとの共通点は、同い年であるということ以外にもあったのは言うまでもない。
『やっぱ最強はうちの青峰やろ』
『何を言うとる。ディフェンスはもとより、スイッチの入った紫原のオフェンスを止められるヤツはそうはおらんぞ』
『スイッチが入ったらの話だろ?それをいうなら、常に最高のパフォーマンスが発揮できる緑間の左手に勝るものはねーよ』
『赤司に将棋で勝てたことは一度もないそうだがな』
『今してんのは将棋じゃなくてバスケの話だろーが!埋めんぞ!』
十年にひとりの天才と呼ばれた“キセキの世代”を獲得した強豪校で、一年間彼らとともに過ごした苦労という名の自慢話は尽きることはなく。
『親バカ丸出しだな』
『ナニ言うてんねん。お前の黄瀬自慢も大概やで』
『あぁ?俺がいつそんな話を』
『ヤレヤレ、自覚ないんかいな』
全国常連校の一員として、そして主将として、目には見えないプレッシャーを背負っていたあの頃とは違う空気が心地いい。
もっとも、高校時代の思い出が決して辛かったという訳ではなく、むしろ。
(アイツら、ちゃんとやってんだろーな)
滑舌の悪い新キャプテンのもと、次世代を担う青の精鋭たちは、さらに成長を遂げているであろうエースを中心に、全国制覇という目標に向かって鍛錬しているはず……だ、多分。
まるで子離れが出来ない親のような思考を叱咤するように、笠松は握りこぶしで自分の額をガツンと叩いた。