第8章 今吉翔一・牛島若利 【R18】
「いい加減にして欲しいのはワシの方、なんやけどな」
「ン、何……のこと?」
冷房が効いているはずなのに、じっとりと額に張りつく前髪を指で払うと、結はシーツに腕を投げ出した。
今吉が何のアポイントも取らないのはいつものこと。
だが、突然の来訪者は、まったり家飲みを邪魔するだけでは飽き足らず、有無を言わせぬ眼力で狭いベッドに組み敷いた結の身体を、思う存分貪った。
あの瞳に射貫かれて、NOと言えるほどの強さは残念ながら持ち合わせていないのだ。
「来る時はちゃんと知らせてっていつも言ってるでしょ。今夜はひとりでゆっくり飲むつもりだったのに……」
「ナニ言うてんねん。ワシのこと離さへんのはお前の方、やろ?」
顔の横に手をついて、上から勝ち誇ったように見下ろしてくる視線から目を逸らすと、お仕置きだと言わんばかりにゆらゆらと腰を揺らされて、結は唇を噛んだ。
学生時代、バスケをしていたという彼の身体は今も硬く引き締まり、その時に培ったであろう体力を発揮しながら何度も快感という高みへ連れ去ったというのに。
「や、ちょ、っと……も、無理だから、ぁ」
すっかり彼のカタチに馴染んでしまった自分の身体を恨めしく思いつつ、徐々に勢いを増す昂りに隙間なく埋めて欲しいと願ってしまう貪欲さを止めることは出来なかった。
「揺れてんで、腰。エロいなぁ……ホンマ」
消されることのない照明を背景に、ゆっくりと近づいてくる薄い唇が、額に、鼻先に、頬に繰り返し触れる。
「ど、したの……なんか、今日はいつもと違……っ、ん」
「自覚、ないんかいな」
カプリと下唇に噛みついてくる歯に、思わず反らせた背中はおそらく彼の予想の範囲内。
わずかな隙間に滑り込んでくる腕の強さに、だがいつものような余裕は見られなかった。
「……翔、一?」
「アイツには渡さへん」