学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
続けて口を開くローを遮って、震える声が静かな部屋に吸い込まれてゆく
俯いたセナは唇を噛み締め、服の裾を握り締めた
「おい、?」
「どうして…っ」
先ほどまでみんなに聞いた自分たち2人の姿は…どんな時もお互いを想い合い、まさしく運命の下に強い絆で結ばれていたのに
現実はこんなにもあっさりと、残酷に終わりを告げるというのか
すぐ近くに、気配を感じると条件反射のように顔を上げた
その頬には自然と溢れた涙が伝い、大好きなはずの顔をいびつに歪めて見せる
「…えって」
「?なに、ッ」
「帰って!なんで来たの!記憶のない私に用はないはずでしょう?!」
ドンッと目の前の胸板を力任せに押し、部屋から存在を追い出そうとする
けれど当然、体格差や力の差によりローが動くことはない
寧ろ腕を強く掴まれて、引き寄せられてしまえば簡単に腕の中に戻ってしまう
「落ち着け。何が言いたい」
「離して…ッ」
ジタバタと暴れようとするが、ピクリとも動かせない
すると先ほどまで諭すように問いかけていた声音が変わる
「離したら、お前は逃げるんだろ」
その声は同じ人物から発せられたとは思えない、静かで冷たい怒りに満ちた声
「だが俺は、お前を逃がす気はねェ」
「ッ…」
「逃げるなら、その心臓を取り出してでも俺に縛り付けてやる」
ドクンと、ローの声に反応したように心臓が脈打つ
呪縛にでもかかったように、身動きがとれず目が離せない
冗談だと言い返せなどしない、目の前のローの放つ雰囲気はただ真剣だった
セナは怖くなる
決してローの発言にではない、
その真剣さと執着にも近い愛情の深さに
さらには今の自分に沸き起こった感情
胸の中に抱えておくには重すぎて大きすぎて、堪らず声を大にして吐露してゆく
「取り出してよ、」
冷たく見下ろすローを、強い眼差しで見返し叫ぶ
「取り出して、ローの側でローのことしか分からないままで
私の心臓を握り潰して、私を殺してよ…!」
大声で言い切ったセナを目の前に、ローは思わず目を瞠った
記憶のない彼女から、そのような答えが返ってくるとは思っていなかったからだ
今のセナにローの能力についての記憶はない
ならば、本当に自分に殺される覚悟で言ったということになる
それはセナという魂からの告白