学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第4章 姫始めは初詣のあとで(*)
確かになんて事はない。けれどこんなにも気持ちを高揚させるのはローだけなのだ
彼を想う気持ちだけが、セナをこんなにも感じやすくさせている
「ね、ロー…」
潤んだ黒目が上目遣いでローを捉えた。可憐な唇が薄っすら開くと切なげに名前を呼ばれて、ローはドクリと心臓が高鳴るとともに全身に熱が広がるのを感じる
胸に込み上げてくるものがあった。そうなんて事ない、これから先も何度だって迎えるだろう当たり前の瞬間を
特別だというセナに、この気持ちをなんと伝えれば良いのか
月並みな言葉では、到底言い表せそうもなかった。だから少しでも伝わればいいと、吸い寄せられるように唇を重ねる
「、ン」
触れて重ね合った唇に、啄ばむように何度も吸い付いた。セナは睫毛を震わせ、くすぐったさに鼻から抜ける吐息がだんだん甘く色を含む
「ふ、ッ…も、ロー…んぅっ!」
全身を包むもどかしさに、堪らず声を上げようとしたセナの言葉ごと唇を塞ぐと、舌を滑り込ませた
咄嗟に逃げようとする舌先を絡めとり、咎めるように強く吸い上げる
「ンン、ッ!」
ビクリと細い肩が大仰に跳ね、抵抗を示していた指先が何か堪えるようにギュッと拳を握りしめた
それでもローは構うことなく、狭い口内を舌で弄る
頰の内側も、歯列も上顎までセナに触れられる全てを余すことのないように
窓の向こうでは、時折子供たちがはしゃぐ声と足音が通り過ぎる。日はまだ高い、それでも今の2人には関係のないことだった
普段とは違い静かすぎる世界に包まれて響く、自分たちだけの音
耳につく水音も、段々と荒ぐ呼吸も合わせたように早まる鼓動も
2人分の音が、熱だけがこの世界の全てであるような錯覚を起こしてしまいそう
「ンふぁ…ロー、ッ、待って…」
口付けたまま角度を変えようとした何度目かのタイミングで、ローは肩を押されて唇が少し離れた
思わず不満げに見下ろしてみれば、セナも不服そうにローを睨み上げている
「待ってって、言ってるのに…ッぁ!」
「待てねェ」
「ちょっ、ちょ…ッロー!!」
覆い被さるようになり密着したローの身体の熱を感じて、セナは恥ずかしさから逃げ出そうと身をよじった
するといつもは決して重いと感じないローの体重が、じわりと身体にのし掛かる
「逃げんじゃねェ」