学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
何故かいつもセナのピンチの時には居ないのが両親なのだ
幼い頃からそうなので、すでに慣れっこではあるが
「ただいま…」
ゆっくりと扉を開けて中に入ると、至って家の中は静かだがやはり明らかに人の気配はある
二階の奥の扉から、微かだが灯りが漏れているようだ
極力足音を立てないように、階段を上り自室の前に辿り着く
しかしドアノブに手を掛けたところで、勢いよく扉が開き顔面を強打してしまう
「っぶ!」
「なんだ、ッ?!」
部屋の中にいた誰かは何かにぶつかった感覚に、慌てて顔を出した
部屋の内外に居たお互いが、お互いの存在を認識するとポカンと口を開く
「ろっ、ロー?」
「!お前、記憶が…?」
「あっ違います。っじゃない、違うの」
昨日まで"さん"付けで呼んでいたはずが、いつも通りの呼び方になっていることにローが素早く反応をした
しかし呼応する言葉はやはり一瞬敬語が混じっていた。すぐに訂正するような口調で言い直されたが
どうやらまだ記憶が戻ったわけでは無さそうだ
「…どういうことだ」
「あの…そもそも、ローはどうしてここに?」
伺うように聞いてくるセナを見て、ハッと気付く。そうだった…
記憶のないセナには、ローが勝手に家に出入りをしていることが不思議だろう
今の彼女の中では寝起きの悪いセナを起こす役目は、幼い頃と同様幼馴染2人の役目だろうから
その2人から強引に役目を買って出たのは、ローなのだけど
「合鍵を、あいつらに」
「あいつらって…シャチとペンギン?」
「ああ、その…借りて入った」
決して全てが嘘ではない
2人にあの時から鍵を借りているのは本当だし、そもそも既にセナの両親も公認の仲なので何の問題もないはずだ
「それより、なんだあのメールは」
「メール?」
「今日の予定を、キャンセルするだと?」
煌々と光るスマホの画面を見せられて、映し出された文面を目で追うと問われている内容を理解した
昨晩、本来は2人で過ごすはずだったクリスマスの予定を断ったことを思い出す
しかしそれは今朝までの自分の愚かな考えで、今は180°考えが変わっていた
けれどそんなことを知るはずもないローは、渋い顔をしてセナの答えを待っている
腕の中に抱えた小さな箱を、グッと抱え込んだ
「あのっ」
「?」
「これ…ッ、」