学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
すれ違い離れても、それでも交わる2人の運命
「セナちゃんが、随分と遅いから探しに出ようとしたところで2人が帰ってきて何事かと思ったよ。まぁそれからは…いつもの2人だったから良かったけどな」
セナの想いの込もったケーキを、ローは何も言わず口に運ぶ
甘さはかなり控えめで、どちらかといえばほろ苦さが舌に残るような大人の味
けれどローにはこのハートの形をしたチョコレートケーキが、とても甘く感じて口元が緩みそうになるのをどうにか堪えていた
喧嘩中だというのにセナは、甘さの苦手なローのためにあれこれと此処で試行錯誤したのだろう
言葉も交わさない状態なのに、彼女の中には常に彼が居たのだ
そして同じ時間だけ、彼の中にも常に彼女が居た
「これは、そんな2人の運命と絆のケーキだ」
「運命と…絆…」
キラキラと宝石のように輝く目の前のケーキに視線を落として、フォークでひとさし口に含む
甘いものが好きなセナにはかなり控えめな甘さのケーキ。全然自分好みではない、それでもどこかこのケーキを好きだと感じた
それは自分が大好きな彼が食べてくれるケーキだからだろうか
「サンジさん」
「おいで」
「え…」
「準備は整ってる。早くしないと、クリスマスになっちまう」
「!ありがとうございます!」
サンジにエスコートされ、甘い香りの立ち込めるバラティエの奥に消えてゆく
タイムリミットまであと、5時間…ー
タッタッタッタッ…
「ハァッ、はぁっ…」
胸に抱えた箱の中身が崩れないように、セナはバラティエからの帰路を走っていた
料理をするのは得意なセナだが、お菓子作りは多少苦手だったため、予想外に手こずってしまったのだ
しかし走ったところで、実はこの先の計画は白紙のまま
今一番会いたい人には、昨日約束の断りを入れてしまっている
『どうやって』
呼び出せば良いのだろう。記憶も戻っていないのに
すでに時刻は夜の9時を回っていた
ようやく辿り着いた自宅に入ろうとして、違和感を感じる
ガチャリ
鍵が、空いていた
そして微かに、二階から物音が聞こえる気がする
『泥棒…?』
昼間に家を出る際、慌てていたので鍵を閉め忘れたのだろうか
だが今は謎解きをしている場合ではない
まだ帰って来ていない両親はおそらく朝帰りだろう