学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
いきなりの慣れない仕事に、余裕がなくなっていたセナと、何も聞かされていなかったロー
お互いに少しのズレだったはずが、やがて大きな亀裂を生んでしまった
いつもはどちらかが折れたり、互いにきちんと誤解を解いて仲直りとなっているところだが
この時ばかりは、お互いに何一つ譲らなかった
「言葉を交わさないどころか、目も合わせなくなった2人にあの時は流石に焦ったよ」
しかし実は、ここでサンジしか知らない話がある
セナが記憶をなくしたからではない、元々セナの知り得ないこと
それは2人が喧嘩をした数日後、店の前で閉店作業をしていたサンジの元にローが1人訪ねてきた
中学生の頃は、まともに付き合うということがなかったローにとって、セナとの付き合いは言わば初恋のようなもので
なにかと乙女心を理解するのに苦労する日々
そこでレディファースト至上主義といっても過言ではないサンジに、彼はこれまでも度々セナのことを相談していたのだった
しかしこの時ローは多くを語りはしなかったが、たった一言
『残りの日数、セナを頼む』
そう言って彼は、他人には滅多に下げない頭をサンジに向かって下げたのだ
その行動に納得がいかず、サンジがキレたのは記憶に新しい
頭を下げる相手は決して自分ではないだろう
高いプライドをへし折ってでもセナのためにサンジに頭を下げられるのなら、何故直接セナに謝らないのか
懇々と店の前で、自分より背の高い男に説教をしていた姿は滑稽だっただろう
けれどこの時、サンジは知っていたのだ
「このケーキはこっそりと、仲直りのためにってセナちゃんがローのために考えたモノだ」
「何故、こっそりを知ってるんですか?」
「それはナイショ」
セナの記憶が戻った時に、どこまで覚えているか分からないが
知らずに済む話なら、知らない方がいい…彼女のプライドのために
「これが、俺の知ってる君のローへの愛だよ」
ケーキを見つめつつ、サンジはセナを振り返りニッコリと笑う
「甘い物が苦手なローのために一生懸命考えられたケーキだ。喧嘩をして口もきいていなかったのに、セナちゃんは常にローのことを考えていた」
そして勿論、ローも同じようにセナのことを考えていた