学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
突然ゼフに謝られるようなことを言われてセナは困惑する
なにも謝られるようなことがあった覚えはない
「サンジの野郎が、なにかやらかしたんだろう」
「いえ、特には…」
「セナにとってはそうでなくとも、アイツはやらかしたんだ」
キッチンの奥に消えた姿が見えているように、ゼフは目を細めた
そうしてセナを振り返ると、ニィッと豪快な笑みを浮かべる
「これから出てくるはずのモンは、遠慮せずに食ってやってくれ」
「は、い?」
「まぁ出てくりゃァ分かるさ。それでサンジも「げっ、クソジジイ!何してんだァ?!」
銀トレイを携え、奥から顔を出したサンジがゼフの姿を目に留めると一瞬バツが悪そうな表情をした
しかし幸いにもセナの角度からは見えずに済む
「大事な客を1人で待たせてんじゃねェ、ボケナスが」
「うるせェよクソジジイ!んなこたァ分かってる!!」
「分かってんならさっさと出すモン出しやがれ」
「な…ッ!ジジイに言われなくても出すに決まってんだろーが!」
ギャーギャーと騒がしく始まった親子ゲンカ(?)を見守ることしかできないセナは状況が飲み込めず
すっかり冷めてしまった残りのミルクティーを口に運んだ
するとその光景を視界に捉えたサンジが、慌てて駆け寄ってくる
「ミルクティーのおかわりを淹れてくるよ」
「ありがとうございます」
「それと、これ…食べてくれるかな」
そう言って持っていたトレーから下ろされた皿には、可愛らしいハートの形をした小ぶりなケーキ
セナは瞳を輝かせた。初めて見たはずなのにどこか懐かしさを感じる
「すごく素敵なケーキですね!」
「それはセナちゃんがローに作ったケーキだ」
「私が、ローに…?」
それはいつの話だろうか。思い返してみるけれど、こめかみが痛むだけで思い出せない
「夏休みに、ここでバイトをしてくれたのは覚えているかい?」
「はい!それは、覚えています」
「あのとき急に頼んだものだから、君はローにバイトのことを伝えてなかったんだ」
セナの料理の腕と愛想の良さを見込んだサンジに、夏休みの間だけの臨時アルバイトを頼まれた
しかし彼女の記憶はそれだけで、何事もなく終わっているのだが…
「なにかあったんですか?」
「2人の間ですれ違いが生じて、結果、大ゲンカしたのさ」