学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
ペンギンとシャチが指差す方向に振り向いた2人の目線の先には
扉を開けたままの体勢で、こちらを睨み付けるローが立っていた
「ろっ、ロー!やめろよ?!バラすのやめろよ?!」
「コラさんだから3秒待ってやる、セナから離れろ」
ヒシヒシと怒りのオーラをぶつけてくるローに、慌ててセナから距離を置こうとする
が、何故か余計に力が込められたことにコラソンは更に焦った
「ちょっ、セナちゃん?!」
「コラソン先生、」
「?…セナ、ちゃん?」
コラソンはハッと違和感に気付く。セナの瞳が…
彼女のローを見る視線から何も感情を感じられない
出会った日から、いつでも2人の間には相手を想う感情に溢れていたことを知っている
「この人は、誰ですか?」
だから彼女の口からそんな言葉が出るとも思わなかったし
そんな言葉が出てほしくなかったと、コラソンは瞬時に思った
*****
「そうか…セナちゃん、記憶を無くしてたのか」
事の成り行きを聞いたコラソンは、安心したような
それでいて先の見えない不安なようなものを感じて複雑な表情を浮かべた
「悪ィ、ロー…俺が来ちまったせいで」
自分が来たことで、自分を思い出したことで…唯一思い出さないローを再び忘れてしまったセナ
その事実に、コラソンは頭を下げた
しかしローは何ともない顔でコラソンの肩に手を置き顔を上げさせる
「いや、コラさんが来てくれて良かった。あいつが1人でも多く思い出せるのは、大事なことだからな」
「ロー…お前、大人になったな」
「それは…どういう意味だ」
セナと出会った頃のローなら、2人の障害になり得る状況など目の敵にして周囲に当たり散らしていただろう
しかし今は、たとえ自分が忘れられようともセナのために最善の策を考えられるまでに成長したようだ
「ホント会長の愛を感じるッス!」
「セナ愛されてんなァお前!」
遠巻きに2人のやりとりを見ていたシャチとペンギンが、涙ぐみ鼻を赤くして間に居るセナの肩を叩く
当の本人は、唯一知らないローの愛だなんだと言われても…どう反応していいのか分からず愛想笑いを浮かべているしかない
そんなことがあって、現状セナの周囲で思い出せていない存在は、ローだけとなっていた