学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
ナミがそんなことを思い耽っていると、弱々しい視線を感じる
向けられている方向に視線を落とせば、セナが不安げに此方を見ていた
声を掛けたそうにしているのだが
「?」
「あ…っと、」
「!私の名前?私はナミ」
名前が分からなくて、声をかけ辛かったらしい
セナは求めていた答えが聞けたようで、ホッとしたように息を吐いている
「ほんと、みんな忘れてんのね」
「うん、ごめんね…?」
「謝ることないわよ!そのうち戻ることもあるんでしょ?大丈夫!」
安心させるように肩をポンッと叩いて、ナミがにっこり笑う
「ありがとう、ナミ…」
「いいのよ!私たち親友じゃない!」
「うんっ!」
「オイ、セナ居るか?」
教室の出入り口から男子生徒の声がすると、その周囲にいた生徒たちが小さく悲鳴を上げて散り散りになる
「あーややこしいのが来たわね」
「えっと、呼ばれたのは私ですか?」
席を立ち出入り口に向かうと、2mは超えた長身の生徒がこちらを見下ろし睨んでいた
真っ赤に燃えるような髪には大きなゴーグル、視線で人を殺せそうな鋭い目付き、口元には口紅が引かれているように見える…不思議で凶悪な雰囲気だ
おもむろに男子生徒が口を開く
「テメェ、なんでさっき無視しやがった」
「へ?無視、しましたか?」
こんなに見た目が派手な人に威圧的に声を掛けられれば、嫌でも印象に残ってそうだが
セナの記憶にはさっぱり姿が見当たらない
「なんだァ?その話し方は」
「あの…私今、「今更怖気づいて親友じゃねェとか、言うんじゃねェだろうなァ?」……はい?」
今この目の前の威圧的な彼は何と言っただろうか
親友…と、確かに聞こえたような気がする
考えあぐねていると、セナを庇うようにナミが間に立ちはだかった
「ちょっと!ユースタス・キッド!もう少し優しい物の言い方できないの?」
「うるせェな、テメェにゃ関係ねェだろーが。引っ込んでろ!」
「セナが親友っていってもね、私はアンタをこの子の親友なんて認めて「ちょっ、ちょっと待ってナミ!」
一歩も譲らず睨み合う2人の間に割って入ると、視線がセナに集まる
「私とこの人が、親友?」
「なんだァその聞き方は」
「あっご、ごめんなさい…!」
「喚くなユースタス屋。今セナは記憶を無くしてる」