学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
いつだったか、付き合い始めてから随分と経った頃
初めてこの部屋に来たセナは同じ反応をして
同じ質問をローに投げかけた
『本当に、忘れてるんだな』
まるで知らない世界に来たような反応はとても胸が痛むのに
変わらぬ反応だったのは、どこか懐かしく嬉しさもある
「ローさんの部屋は専門書が多いんですね」
「ローでいい」
「え、でも先輩ですし。そんな呼び捨てなんて」
初めて出会った頃も、同じことを言っていた気がする
中々ローのことは呼ばなかったのに、セナの一つ上であるルフィのことはすぐに呼び捨てたりして
そうやっていつでも、ローの心を掻き乱すのは変わらない
「俺がいいって言ってんだ。呼んでみろ」
「え、いきなり…」
「呼ばねェなら、キスする」
「そんなっ」
ベッドに下ろして、顎を掴むと触れないギリギリの距離まで顔を近付ける
どうしたらいいのか分からない様子で、キョロキョロと視線を泳がせた
「呼んでみろ、ホラ」
「っ〜〜ムリで、す」
「それはキスして欲しいと?」
「違いますっ…うー…」
あーだうーだと唸って、どうにか言い訳を考えているようだが
何も思い浮かばなかったようで、諦めたように瞳を閉じた
「セナ」
「ふぇ…ッ」
耳元で名を呼び、閉じられた瞼に口付ける
情けない声をあげて瞼がそろりと持ち上がり視線が合えば、瞬時に顔が真っ赤になった
「いきなり何するんですか…っ」
「さっさと呼ばねェのが悪い」
「だから私はあなたより年下で!」
「今度は唇にしてやろうか?」
顎を持ち上げ喚く唇を親指でなぞるとニヤリと笑う
するとセナの顔は更に真っ赤に染まり、唇をワナワナと震わせた
「ッ呼び捨てにすればいいんでしょ!」
「ああ、そうだ。早くしろ」
「……………ロー、」
ボソリと消え入るような声だったが、しっかりとローの耳に届いた声
セナが意識を取り戻してから、初めていつも通り呼ばれた名前
たったそれだけのことで、胸の内に熱が広がってゆく
「もっと」
「え?」
「もっと呼べ」
「ええっ、と…ロー?」
小首を傾げて不思議そうに名前を呼ぶ。言われるがままに呼んでみたが、意味がよく分かっていないようだ
しかし目の前のローは満足そうに目を細め薄く微笑んでいるように見える
「あの、私は本当にローとお付き合いしてたんですか?」