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学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)

第2章 聖夜のシンデレラ(*)


その場にいた全員が、言葉を失った
そんな目の前に広がる光景を怯えたような瞳で見回すと、セナは少しだけ布団を引き寄せる

「名前は?言えるかしら」

ベッドに腰を掛けたローの母親が、先ほどと変わらず優しく声を掛けた
布団を強く握りしめる手に、安心させるように両手を添えながら

「白石 セナです」
「そう、セナちゃん。昨日が何月何日だったか、分かる?」
「12月16日です」
「今いくつ?」
「高校1年生です」
「この中に、知っている顔は1人も居ないかしら?」

言われて、再び全員の顔を見渡す
それから肩を落として俯いた

「…分からないです」
「いいのよ。こちらこそ、ごめんなさいね」
「、おい」
「?は、い」

先ほどから話しかけていた母親の傍らに立ち尽くしていたローが、一歩近づくとセナはビクリと身を強張らせた

「何の冗談だ」
「…え?」
「ちょっとロー、やめなさい!」

「えっと、ごめん…なさい」
「謝るくらいなら、早く嘘だと…「ロー、いい加減にしなさい」…ッ父さん、」

声を荒げたローが、セナの肩を掴もうとした寸でのところで父親が制止をかけた
父親の医者としての冷静な表情と声に、徐々に落ち着きを取り戻す

今のセナにとっては、見ず知らずの男にいきなり怒鳴られたことになる
振り返れば完全に怯え切った表情で、傍に居たローの母親に隠れるように寄り添っていた

「気持ちは分かる。しかし、今彼女を責めるのは筋違いというものだ」
「…ああ、」
「少し席を外そう。みんなも。母さんはセナちゃんの傍に居てあげてくれ」
「分かったわ。ごめんなさいね、怖がらせて」
「大丈夫、です…私こそごめんなさい」


中に2人を残して、静かに扉を閉めた
扉の外から中を覗いていた3人も出てきた2人の後に続く

「名前や年齢、日付の感覚は正確だったから。きっと脳への衝撃で記憶が混濁しているんだろう」

今は余計な刺激を与えない方がいい、その場の全員が忠告を受ける
記憶障害は、時間との勝負になる
明日になれば戻るかもしれないし、年月を重ねても戻らないかもしれない


「それでも彼女を守り切る覚悟はあるかい?ロー」

突然名指しをされて、ローは少しだけ目を瞠る
今のセナは自分を覚えていないのだ。寧ろ怯えてさえいる状況
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