学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
壁に当たった鈍い音を聞いて、雷に打たれたように3人は階段を駆け下りた
転がり落ちたセナが、ピクリとも動かない
ローは状況を冷静に判断しようとするが、気ばかりが焦る
脳震盪を起こしているのかもしれない。打ち所が悪いと下手に動かすこともできない
「っ会長、どうしたら!」
「死んでませんよね?!」
悲痛なシャチの叫びにハッと口元に手をかざす
幸い呼吸はしているようで、最悪の事態は免れたと安堵する
早鐘を打つ鼓動をどうにか落ち着かせようと、大きく深呼吸をして頭を軽く振った
「お前ら、手を貸せ」
「どっ、どうするんですか」
「うちの病院に連れていく。なるべく振動を与えない方がいい、固定して早急に運ぶぞ」
今いるセナの家と、外科病院を営むローの家は10分とかからない距離にある
ローが横抱きにする形でだらりと力のない身体を抱き上げた
すかさずシャチが足元を、ペンギンが頭を支え全体がなるべく動かないようにする
傍目からすると妙な光景だが、急ぐ足を最大限慎重に扱って病院へ向かう
道中もセナは目を覚まさない。静かに閉じた瞼は、睫毛が色濃く影を落としたままだ
頭を打った直後はなんともなくとも、時間がたてば死に至る可能性もある
「死ぬなよ、バカセナ…」
「縁起でもないこと言うなよ!」
「お前だってちょっとは考えてんだろ!どうなるか分からないんだぞ」
「俺たちが信じなきゃどうするんだよ」
「信じてるに決まってんだろ!」
頭上と足下でペンギンとシャチが口論を始めてしまう
互いに焦燥感が募り、やるせない気持ちで苛立ちが増していた
「…やめろ、お前ら」
「でも、会長…!」
「バカ!今一番辛いの会長だぞ!」
「お前がバカだ!」
「一番はセナじゃねェのか」
これだけのバカ騒ぎをしても、腕の中の身体はピクリとも動かない
それでも、脳内ではどこか痛みを訴えているかもしれない
生死の境で一人孤独に耐えているかもしれない
本当に辛いのは、他の誰でもないセナ自身かもしれないのだ
「少し急ぐ。しっかり支えてろ」
それから暫くして無事に病院へ到着したが、今日は休診日なので家の入口へ回る
「父さん!」
「大きな声を出してどうし…セナさん?!」
ローの妹であるラミが、目の前のただならぬ雰囲気に声を上げた