学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第1章 10/31の文化祭(*)
ナミに向いていた視線が、ゆっくりと此方へ向けられ視線が絡み合おうとしたその時
〈ロー会長!写真一枚お願いできますか〉
「写真?何に使う」
〈あっ校内新聞用の写真です!!〉
「さっさと終わらせろ」
写真部だろうか、立派なカメラを抱えた生徒が1人声を掛けてきた
用件を聞いてしまえば、無下にできる内容ではなく
名残惜し気にセナから離れたローは、生徒に指定された場所へ立つ
『あ…』
カメラを見据えるその表情は、不機嫌を浮かべていた先ほどまでの彼ではなくて
自信に満ち溢れながら、余裕の笑みを浮かべている…それなのに瞳の奥にはどこか優しさが灯っていた
〈OKです!ありがとうございました!!〉
「前見て歩け、ぶつかるぞ」
何度も頭を下げながら去っていく生徒を見かねて、一言忠告するのも忘れない
「ふふ」
「?何がおかしい」
「ロー、お医者様みたい」
「は?」
「生徒会長をしてるときのローは、お医者様みたいだなぁって」
「お前はまた脈絡もねェことを」
ナミは写真を撮っている間に、ルフィに呼ばれて行ってしまっていた
2人きりになったので、荷物を取りに生徒会室へと足を向ける
「さっきのはどういう意味だ」
「さっきの?」
「生徒会長の俺が、医者だとかなんとか」
「ああ…」
生徒会室が近づいてきた辺りで、それまで無言だったローが口を開いたかと思えばつい先ほどの話の続きだった
もしかして、今まで意味を考えて黙り込んでいたのだろうか
「いいお医者様って相手を不安にさせないように嘘でも自信たっぷりに笑ってると思うの。自信ありげだから何処か偉そうにみられちゃうけど、実はその行動も言葉も全て相手への思いやりと優しさで溢れてるのよ」
「?それが生徒会長のときの俺だと言いたいのか」
生徒会室の扉を開け、中に入ると荷物を手にしながらセナは振り返る
「そう。だって生徒会長をしているローはとても格好良いんだから。胸を張って、とても強い眼差しをしているの。だけどちゃんと相手を思いやって気に掛けてあげてる」
「…別に覚えはねェがな」
後ろ手に扉を閉めてセナと向き合う。薄暗い部屋で、外に花火が打ちあがるたびに室内を照らす
一瞬だけ鮮明に見えたセナの顔は、とても穏やかだった
「でもそれも当たり前ね。だってローは将来、素敵なお医者様になるんだもん」