学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第1章 10/31の文化祭(*)
『なっ、なんだよテメェ…!アダダダダ!』
薄青い半円状のドームの中で、男はワケが分からずに辺りを見回す
セナに掴みかかろうとしていた腕は形が変わりそうなほどの力で握られて情けない声を上げた
今なら視線だけで人を殺せそうなローは、男をただ静かに睨みつけている
「コイツを、どうするって…?」
『テメェにはっ、関係ねェだろ…っ!この女は俺の美しい顔を殴りやがったんだ!この大勢の前で辱めにしてやるんだよ、ど、退けぇッ!!』
まるで氷のように冷え切った声で、問われて思わず震え上がったにも関わらず
しかし男はバカなのか威勢だけは良くて、あろうことかローに食って掛かると先ほど言いかけていたセリフを完全に言い切った
刹那
「"メス"」
『ぅ、あ…っ?!お、俺の心臓、がっ?!』
四角い透明なキューブの中で早鐘のように脈打つ心臓がローの手に握られる
信じられない光景に、男は戸惑い恐怖に息を詰めた
「なら貴様はここで公開処刑にしてやるよ」
『ぐぁ…っ!や、やめてくれ…!!』
手の内の心臓にギリギリと力を込めれば、男は狂ったように暴れまわる
痛みと恐怖で、ほとんど意識を失いかけている
「汚ねェ手で人のモノに手を出した挙句、バカな考えを持ったことを後悔するんだな…!」
「ローやめて!!」
あと一握りで心臓を潰そうとしたローの手に、後ろから小さな手が添えられる
恐怖で竦んでいた身体を叱咤し、なんとか立ち上がったセナがローを見つめて静かに首を振った
「この人はもう反省してる。だから、許してあげて」
「何を言っている…自分が何されたか分かってんのか?!」
「別に何もされてない。ちょっと絡まれただけよ…私は大丈夫だから」
ぎゅっと、添えられた手に力が込められる
恐怖に冷え切った細い指から、小さな震えが伝わってくるのに無理に笑おうとしている姿に、脳まで煮え滾っていた血が一気に冷えていくのが分かった
「チッ、強がってんなよ……クソッ」
気を失っている男に、心臓を戻すと小さな身体を抱きしめる
そうすると全身に伝染するように震えが伝わってきた
素肌のままの胸元に、湿った感覚が広がる
『こんな奴を相手にしてるんじゃなかった』
何よりも優先すべきはセナなのに
彼女のことになると頭に血が上って見境がつかなくなる
「泣くな…もう大丈夫だ」
「ん…」