学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第4章 姫始めは初詣のあとで(*)
「ロー?ごめんね?」
初めて2人で迎えた年末年始だったのだ。仲間たちとの初詣も確かに楽しかったが、セナとしてももう少し年越しの余韻に浸っていたかった
だから、今目の前で複雑な表情を浮かべたローの気持ちは同じように分かる
どうすれば、彼と同じ気持ちなのだと伝わるだろうか
「ハァ…分かってる」
「え?」
どうやって伝えようかと考えていれば、短く溜息を吐いたローが言葉を返す
まだ一言も発していないセナは、訳が分からず首を傾げ眉を顰めた
「何が分かったの?」
「お前は言いたいことが顔に出すぎだ」
「そんなに分かりやすい…?」
実は覇気を使ったりしたのではないだろうか、ほんの少し疑いの色を浮かべた視線を向ければ心外とばかりに渋い顔をされる
「覇気なんざ使わなくても、お前のことだけは分かる」
「そういうものなの?」
「そういうモンだ」
ローは頷いて笑みを浮かべると、くしゃりと前髪を撫でつけ額に口付けを落とした
「あのね」
「ん?」
「私も、ローと同じ気持ちだよ」
例え言葉にしなくて分かるのだとしても、この気持ちを言葉にして伝えたいと思う
分かってもらえることに甘えるのは、言葉にできない時だけでいい
「…あァ、分かってる」
「早くローに触れたかった。私に、触れてほしかった」
「俺もだ。早くこうしたかった」
腰を強く抱き寄せ、呼吸が止まってしまいそうなほど強く抱きしめられる
「苦しい…ッ」
「悪い、離してやれねェ…セナ、俺にはお前だけだ」
「ッ」
囁かれた言葉は、絞り出すように低く弱々しい声だった
鼓膜に響く声に抱き締められる苦しさではなく、胸の奥が締め付けられる
「私も、ローだけだよ」
幼い頃に一度出会いながら絶たれた運命は、途切れることなく再び2人を巡り会わせた
それからこうして穏やかに年を越すまで、試練は何度2人に襲いかかったことか
ローが居なければ…乗り越えることなど諦めていた
それはきっと、ローも同じく。セナでなければ、生きることすら諦める場面もあっただろう
「私たちって似てるのかもね」
生き方自体は違えど惰性に生きることを選び、他人のために生きようなど思えなかったはず
「あの時お兄ちゃんに、こうしてローに…貴方に会えて本当に良かった」
愛しい存在とは、こんなにも自分を変えると教えてくれた