学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第4章 姫始めは初詣のあとで(*)
なんの脈絡もないルフィの言葉に、2人で声を揃えて聞き返す
「ナミとビビが、初売り行くんだって聞かねェから。セナも行くだろ?だからトラ男も来るよな」
正月の醍醐味といえば醍醐味である初売り。意外な掘り出し物や、お得に良い物を買える機会だとナミに説得されたらしい
きっとサンジ辺りは快く荷物持ちを引き受けたのだろう
「あれ、それならカヤちゃんは?」
「ん?そういや…確かウソップも居ねェな。どっか行っちまったみてェだ」
初売りに燃えるナミとビビをよそに、カヤは恋人であるウソップと密かに2人きりになったようだ
今頃仲良く賑わう街中をデートしているに違いない
セナはツイと視線をローに向けた
同じくローも視線だけセナに向けていて、互いの視線が交わる
「えっと、ごめ「悪いな麦わら屋。俺たちもこれから抜けさせてもらう」
「んっ?!そうなのか!悪ィ悪ィ!!」
迎えにきてくれたことを断るのは、ちょっとばかり罪悪感だった
けれどそんなことなどお構いなしに、ルフィはアッサリと頷き豪快な笑みを浮かべる
「んじゃまた、学校でなー!」
ブンブンと手を振って、来た道を戻り遠ざかる姿になんだか拍子抜けしてしまう
普段何かと疎い彼は、意外とこうして鋭いときがあったりするのでセナは目を丸くしながらも肩の力を抜いた
並んでいたローはルフィの様子にさして驚いた風もなく、小さくなってゆく後ろ姿を見送るとセナの手を掴み踵を返す
「わっ、ちょっと!」
ローが迷う事なく進む方向は、参拝を終えた人々がゾロゾロと流れて歩く神社の出口だった
隣に並んで顔を覗き込むと、いつも以上に仏頂面で言葉数も少ない。けれどそんなローが想うことをセナも同じように思っているから、伝染するように口を噤んだ
『早く、家に着かないかな』
繋いだ手が熱いと感じるのは、互いの熱が高まっているからだろうか
ドクドクと相手を求めて脈打つ鼓動が響いている錯覚を起こしそうなほど、2人の間に流れるのは静かな空気
気まずいのではなく、気恥ずかしいのが妙にソワソワする
それはセナだけでなく、ローも同じような雰囲気を纏っていたから
神社はセナの家からさほど遠くはない位置のため、気付けば玄関先でローが鍵を開け中に入ると同時に強く腕を引かれた
「ん、ッ!」