学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第4章 姫始めは初詣のあとで(*)
「誰のお陰でテメェの株が上がったと思ってる」
「へーへーそりゃァ全校生徒思いの生徒会長サマがお気遣いどうも。そもそもセナの中で俺の株はそんなに低くねェよ」
頭上で繰り広げられる戦いの会話までは上手く聞き取れない。しかし聞き取られないために至近距離で火花を散らしながら睨み合うローとキッドは、やはり似た者同士だと改めてセナは見上げながら思う
なんだかんだとよくお互いに突っかかって喧嘩をしている2人は、確かに見た目にも性格も行動も考え方まで何もかも違うけれど
『根本的な他人に対する意志や信念は、きっと一緒なんだろうなぁ』
だからこそローは生徒会長、キッドは風紀委員長として…学園を守る役目に就いた
この2人、いつもこんな感じで乱暴な印象でも生徒からの支持は歴代のトップより遥かに高いらしい
『だから、私でいいのかな?って思っちゃう』
未だ続く頭上のやり取りを眺めながら、セナは内心苦笑を浮かべた
今ここに立っているべきは、自分でいいのだろうかと…何もかもが新しくスタートする今、ひどく冷静になるときがある
けれどそんな考えなど見せないように、こうして笑顔を浮かべていれば…ずっと此処に居られる、
「ひ…ッ?!」
悶々と考え込んでいたせいか見上げていたはずの2人の顔が、やけに近くなっていることに気付かず短く悲鳴を上げた
「悲鳴上げてんじゃねェよ」
「ユースタス屋の顔が怖いからだろう」
「テメェも大して変わんねェだろうが」
人のことを驚かせておいて、再びテンポよく言い合いを始めたキッドとローが、いつのまにか此方を向き直っている
「何を考えていた」
「…え?」
唐突にローに言葉を投げ掛けられ、セナは首を傾げた
「どうせまた、自分が在るべき場所とか悩んでたんだろうが」
「…はっ、覇気使ったの?!」
「使わなくても分かるぜ?セナは顔に出すぎるからなァ」
2人はゆっくりと手を伸ばし、セナに触れようとする
殴られはしないだろうが、大きな二つの手が迫ってくる光景は中々の迫力だ
そうして伸ばされた手が、まるで壊れ物を扱うようにそっとセナの髪に触れる
「ッ…?」
「「お前は、此処に居りゃァいい」」
見事に言葉が重なった。冷たい外気に触れる頰が、やけに熱くなるのを感じる
「2人とも、ありがとう」