学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第4章 姫始めは初詣のあとで(*)
キッドの制止の声を無視してセナはローの腕を強く掴む
一度腕を振り払われたことで、思わずカッとなったセナが精一杯の力を込めて腕を引いた
そんなセナにとって精一杯の力でも、ローにとっては振り払おうとすれば簡単に出来る
けれどほんの少し落ち着いた頭で考えて、大人しく足の動きを止めた
そのことに少なからずホッとしたセナの雰囲気を背中に感じる
「…なんだ」
「いちいちヤキモチ妬かないでよ。私の恋人は、ローでしょ?」
掴んだ腕を軽く引かれて振り返れば、申し訳なさそうに眉を下げたセナが苦笑を浮かべていた
少なからず自分の失言を自覚したらしい。大体2人の些細な喧嘩の原因はお互いに言葉が足りないところだったりする
「ごめんなさい。せっかく新しい年を一緒に迎えられたのに、喧嘩はイヤ。…仲直り、してくれる?」
小首を傾げて困ったようにへにゃりと笑う姿にローは内心溜め息を溢す
確かに失言も苛立ちのきっかけではあったのだが
「…チッ」
「え、ダメ?」
「別に怒ってねェよ。お前はいつものことだろうが」
「わっ」
思わず漏れ出た本当の苛立ちに対した舌打ちを聞いたセナが、すぐさま泣きそうな表情を浮かべた
勘違いだと訂正の意味を込めて、綺麗に結い上げられた栗色の髪を撫でつける
「ちょっと!崩れるから!!」
「また手伝ってやろうか」
「…自分で直せるもん!」
髪が乱れることに抗議の声を上げて睨みつけてくるセナをからかえば、ジトリと更に睨みつけて頬を膨らませた
家を出る準備をしていた際、着付けは上手くできたセナだったが髪を結い上げるのがどうにも苦手だったようで
鏡の前で悪戦苦闘している姿を見兼ねたローが、器用に結い上げ飾り付けてくれたのだった
「なんかさ、すごく手馴れてたよね」
「?嫉妬か」
「違う…ことも、ない」
「フッ」
先ほどの二の舞になりかけたことに気付き、渋々本音を零す
なんとも複雑な表情を浮かべるセナに、ローは笑みを浮かべると耳元に唇を寄せた
「女の扱いに慣れてるのは、嫌なのか」
「っ…やだ。けど、どうしようもな…い?!」
無意識だろうか、うっすらと涙を浮かべる眦にも唇を寄せて涙を吸い取る
驚きにローにへと向けられたセナの瞳は大きく見開かれていた
「バーカ」