学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第4章 姫始めは初詣のあとで(*)
声のした方を振り返れば、離れていたはずのセナが此方に駆け寄ろうとしていた
しかし慣れない和服姿と、凹凸のある石畳みの上で何度も足元を取られそうになっている
「わわ…っ!」
そしてやはり案の定というべきか、ローの元へ辿り着く寸前で見事に躓いた
少しばかり普段とは違い自由の効かない身体は、どうにも体勢を立て直せず倒れ込もうとしている
「ッんのバカ…!」
慌てて反応したローが駆け寄ろうとするが、どうにもあと少し間に合わない
セナは衝撃を覚悟して強く目を瞑った
「…?」
のだが、いつまで経っても予想した衝撃は襲ってくる様子がない
「大丈夫かな、お嬢さん」
「!レイさん!!」
気配なく聞き覚えのある声がしたのでゆっくりと目を開け顔を上げると、そこには精悍な顔立ちが微笑みを浮かべていた
すれ違いざまに居たシルバーズ・レイリーが、咄嗟に倒れ込むセナを支えたらしい
そのまま支えられながら起こしてもらうと、さり気なくエスコートするように腰に手が添えられた
「あ、有難うございます」
「いやいや、気にすることはない。此方こそ感謝をしたいくらいだ」
「???」
パシッ
レイリーの言葉の意味が理解出来ずセナが首を傾げていると、乾いた音と共に腰が引き付けられる
引かれた方に顔を向けると非常に難しい表情を浮かべたローが、対峙するレイリーに睨みを利かせていた
「おやおや、これは」
「悪いが、いくらアンタでもこいつに触るのは許さねェ」
「ちょっと、ローってば!」
ローは低く唸るようにレイリーを威嚇しながら、セナを抱き締める腕により力を込める
しかし教師に対して、さらには倒れるのを回避してくれた言わば恩人に対してのローの態度にセナは腕の中で抗議の声を上げるのだが、全く聞く耳持たない様子
そんな2人の姿を目の当たりに、レイリーは高らかに笑い声を上げた
「ハッハッハ!いやァ、今年も楽しくなりそうだ」
「何がおかしい」
「そうカッカするものではないな、生徒会長殿。男には余裕がある方がモテるぞ」
「…チッ」
的外れなアドバイスに、さらに渋面を張り付けたローが苛立ちを隠そうともせず舌打ちを吐く
「先生に向かって舌打ちしないの!」
「セナは黙ってろ。言っておくが、俺はこいつ以外にモテたって、仕方ねェんだよ」