学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第4章 姫始めは初詣のあとで(*)
ふてくされたような表情のまま、クローゼットから事前に母親が用意してくれていた和服を取り出し袖を通す
姿見の鏡の前で、何度も練習した着付けを施してゆく
生まれたままだった姿は、あっという間に華やかさを身に纏った
「よし、いいかな」
尖っていた唇もいつのまにか笑みを浮かべ、鏡の中でどこか艶やかさを増す
いつもより気合いを入れたメイクも施して、髪を結い上げ、準備は万端
転ばないように階段を慎重に降り切ると、ちょうどローもリビングから出てきたところだった
『あ、カッコイイ』
ピシッと濃紺の和服を着たローの姿に、思わず無言で見入ってしまう
するとそんな気配を感じたのかローが立ち尽くすセナに振り返った
「準備は出来たのか」
「……えっ、あっ?うん、出来たよ!」
「?どこか痛むんじゃねェだろうな」
「へっ、なんで?」
少し難しい顔をしたローが距離を詰めて、覗き込むようにセナの顔を見下ろす
特に顔色が悪いわけではなさそう、というより少し赤いくらいなようだ
覗き込む形のまま前髪を掬い上げると、露わになった額に自らの額を合わせる
「?!」
「熱は、ないようだな」
「ホント大丈夫だから!ちょっと見惚れてただけ、あっ」
「見惚れてた?」
思わず口走ってしまい慌てて口を両手で塞ぐが時すでに遅し…額が離れそれでも鼻先がくっつきそうなほどの至近距離で、ローが首を傾げた
「いつもと違って、和服とか新鮮だし。…やっぱりカッコイイから」
「……」
ガシッ
「え、ちょ、何処行くの??」
観念したように、見惚れていた理由を白状すると暫しの沈黙が訪れる
しかし突然ローは腕を掴むと、再び二階への階段へと足をかけた
「ねぇ、ローってば!忘れ物でもしたの?」
「今日の初詣は中止にする」
「なんでそうなるの?!せっかく着替えたんだし、行かないと勿体ないよ?」
ドンドンドンッ
「セナ、鍵開けろ。ソコに居んだろ、トラファルガーも」
一階に降りて来た気配を目敏く感じ取ったのか、セナの親友であるキッドが扉越しに声をかけてくる
「ちょっと待って、今開け「ッオイ!セナ!」
外からの声に応答してしまえば、今この場に居るという存在を確固たるものにしてしまうわけで
ローは思わず腕を引き寄せセナの口を塞いだが、これまた時すでに遅し