学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第1章 10/31の文化祭(*)
「そんなことないです!気にしないでください」
胸の前で手を振って、なんでもないとアピールする
確かに急な呼び出しではあったが、サンジは悪くない
仕事のことを忘れて出てきてしまったのは自分が悪いのだ
「セナちゃんは優しいんだね」
少し低めの声と、甘くとろけそうな笑顔でサンジが頭をポンポンと撫でてくるのが妙に恥ずかしくて赤くなってしまう
それを見て、堪えるようにクスクスと笑われてしまった
「照れてるのかい?」
「恥ずかしいですもん」
サンジから受ける扱いにはいつまで経ってもなれない
昔から幼馴染の2人が側に居るけど、扱いは同等のものだし
ローと付き合い始めてからは半年は過ぎたが、どちらかといえば彼はサンジとまったく正反対である
物言いもぶっきらぼうで自分勝手なことが多い、時たまさり気ない優しさはあるのだが…こんな風に全面的に甘い言葉を囁いたり徹底的に女性を優先することはない
「ローの野郎、相変わらずみてェだな」
「?どういうことですか」
異性に囲まれている割に、目の前にいる友人がいつまでも初々しい反応を返すのは周囲のタイプが違うのも当然なのだが、それだけではないとサンジは小さく苦笑を漏らした
「いや、こっちの話だ。それより料理のことなんだけど…」
「あ、はい。私もいくつかアイデアを」
話を逸らすようにサンジがレシピノートを取り出すと、料理好きのセナは目の色を変えて話に集中している
セナが自分と2人きり…実はかなり珍しいシチュエーションなのだ
「ここの隠し味は、こっちの方が良くないですか?」
「じゃあどっちも試してみようか、まだ時間は大丈夫かい?」
実はこっそり幾度となくローに呼び出しを食らっては、彼女についての相談を受けていたサンジ
初恋にも似たような恋愛に戸惑う彼に、何度もアドバイスをしてきた
『もう少し寛大になれればねェ』
好きな気持ちは分かるのだが、少々独占欲が強すぎる
自分だけのモノだと、つい周囲からセナを遠ざけてしまうのが良くない
ただでさえ異性に慣れていない彼女は、更に未知の領域へと閉じ込められてしまうのだから
耐性も危機的思考もあるわけがない
しかしルフィの友人として知り合った頃のローは、独占欲なんて単語としての意味しか知らないような顔をしていたのに
『人って変わるもんだな…』