学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第3章 年越しそばと姫納め(*)
じりじりとにじり寄ってくるローから逃げようと身を引きすぎて、セナはソファの端から落ちそうになる
全身への衝撃を覚悟したが、すんでの所でローが背中に腕を回し支えてくれた
そのため落ちることもなく、ゆっくり身体を起こされれば、不機嫌な瞳と目が睨みつける
「…ごめんなさい」
「お前はいつもいつも…ッ」
「だ、だって」
「俺から逃げるから、ロクなことがねェんだよ…いい加減学習しろ」
強く抱き寄せられると、肩に顔を埋めたローが深々と息を吐く
触れ合う鼓動は、いつもよりも少しだけ速くなっている気がした
「心配させて、ごめんなさい」
「…まったくだ。まァ逃してやる気はねェがな」
「…うん。逃さないでね」
抱き寄せられた胸元にスリ、と擦り寄ったセナがふとつけっぱなしのテレビに目をやる
年末の特番よろしく、煌びやかな画面に出演者たちの笑い声…あれ、何か忘れてない?
「あーっ!」
ゴチンッ
「「いっツ…」」
勢いよく顔を上げたセナの頭が見事にローの顎にクリーンヒットすると、お互いその場にうずくまる
「今度はなんだ…」
「いや、年越しそば…忘れるところだった!」
するりとローの腕の中から抜け出ると、ダイニングテーブルに掛けてあったエプロンを着け髪を結い上げる
たまによたつきながらも、キッチンに立つと、小気味よい調理の音が聞こえてきた
その切り替わりの早さに、ローは内心深い溜息を吐く
特別いいムードというわけでも無かったが、セナから甘えてきたりしたから…ちょっとだけそのまま甘い雰囲気になるのを期待していたのに
『って、さっきもヤっただろうが』
己の浅はかな欲望に、自身でツッコミを入れてしまう
自分よりも小さくて細い、さらに体力もあまりないセナはローが無茶をすれば簡単に壊れてしまうかもしれないと思う
そうは思うのだがどうしたってセナを前にすると歯止めが効かない
自分でも異常だと感じるほど、常に身体も心も彼女を欲しがってしまう
「ふぅ…」
リビングのソファからキッチンは一直線に見えるようになっている
つけっぱなしのテレビには目もくれず、忙しなく動くセナの観察をすることにした
高く結った髪が、動くたびに左右に揺れる
そのことで覗く白いうなじが、ローに衝動を覚えさせる
『噛み付きてェ…』