学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
昔は白が大嫌いだった
両親を、自分を苦しめる…薄っすらと白に染まってゆく街、なにより白に染まってゆく病気のせいで
まだ今も、自分自身はその脅威から退けていないけれど
それでも今はこの静寂に等しい白が嫌いではなくなった
お兄ちゃんであるあの頃のローに出会えたのも、今の自分とローを繋ぐのも…全てはこの白色
「ローと私の、運命の色ね」
きっと自分たちを繋ぐ糸は、運命の赤い糸ではなく
運命の白い糸なのだと思う
心臓に巣食う悪魔の色と同じように
物思いに窓の外を眺めるセナの横顔があまりにも儚げで綺麗だとローは静かに息を飲んだ
そして胸を支配するのは、込み上げてくる熱量
「セナ」
「ん?」
この湧き上がる熱をなんと呼べばいいのか分からない、ただ衝動的に名前を呼ぶと、振り返った彼女を抱きしめた
「ロー?」
いきなりのことに首を傾げるセナ
窓際に佇んでいた身体は、心配になるほど冷え切っている
「冷えてんじゃねェか、こっちに来い」
「わっ…」
足元に引っかかっていた毛布を引っ張り上げ、セナを抱きしめたまま巻き込むようにベッドに倒れ込んだ
「どうしたの?」
「なんでもねェ。ただ…」
「?」
「お前が雪に消えちまいそうな気がした」
セナの心臓に眠る珀鉛がいつか牙を剥き発症すれば、彼女の身体は間違いなくこの雪のように白く染まってゆくだろう
そしてそれは、彼女の死を意味する事となる
窓の外に広がる光景は、そんな恐ろしい結末を安易に想像させるくらい静かで真っ白だった
「私はここにいるよ」
「ああ、分かって…ッ?!」
首に腕を回し、顔が向かい合ったかと思えば柔らかな唇がローのソレを塞いだ
出会った頃と比べれば、格段に上手くなったセナの舌使いに静かに酔いしれる
しかし段々と与えられる刺激だけでは足りなくなって、後頭部に手を添えれば貪るように舌を絡ませた
「んぅ、ッ…ふ」
セナが主導権を握っていたはずなのに、いつの間にかローにすり替わったことで
抗うこともできず、熱い舌に翻弄されてゆく
静かすぎるほどの部屋に、クチュクチュと淫糜な水音がしばらく響いた
「ふぁ…っ」
酸欠気味で目の前がチカチカとスパークしてきた頃、それを見計らったように長い口づけから解放される
「どうした、いきなり」