学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
それなのに、今こうしてかつての恩人であるお兄ちゃんは
恋人として、側に居てくれる
「ねぇ、サンタクロースは本当に居るのかな」
「はァ?」
遠い寒い国には居ると聞く、姿を見たことはないけれど
幼い私の願いを、遅くなったけど叶えてくれた不思議なおじいさん
子供騙しなんて通用しない年頃だけど、今もこうしてローと居られるのは
小さな願い事も覚えていてくれたサンタクロースのお陰なのかもしれない
そんな夢物語を思い浮かべて出た言葉に、ローは深々と溜息を吐くと胡乱げにこちらを睨んできた
「?なぁに」
「…他の男の話をしてんじゃねェ」
「他の男って…」
確かにサンタクロースは男性だが、そんなつもりが無いのはローにとって百も承知だろう
というか、そもそもなんでそんな話に飛躍するのか
「…セナを見つけたのは、俺だ」
偶然でも運命でもない
幼いあの時、学園で再会した時も…セナを見つけたのは、他でもない自分
それを何処の誰とも知れない白髭ジジイのお陰だと言われたのだ
そんなわけあるか
「それに俺はテメェの意思で隣に居る」
誰に頼まれたわけではない、自分がそう願った
セナの隣に居たいと…彼女を守り、愛し抜くと
「そ、だよね…」
「お前はもう少し俺の女だという自覚をしろ」
困ったように力なく笑うセナの額を小突くと、ギュッと抱きついてきた
難なく受け止めると、応えるように背中に腕を回す
「ごめん…なさい」
「まぁお前に自覚が無ェのは、いつものことだがな」
「ひど…!」
皮肉めいた台詞に対して条件反射的に、反論しようと顔を上げる
すると待ってましたとばかりに笑みを浮かべながらこちらを見下ろすローと目が合った
「な、なに…」
「何ビビってんだ」
「いや…あの…」
「…ククッ、」
何かを勘違いしてあからさまに動揺を見せるセナの姿が、追い詰められた小動物のようでローはたまらず笑い声を漏らす
「だからなんで笑うの…!」
「いや…いつものお前だなと」
「いつもの…?」
「寝て起きて。また忘れられちゃたまんねェからな」
そうだった、昨日まで自分は記憶を何度も無くしていたのだ
まるで一切の音も奪うような、窓の外の白銀の世界のように…
「…雪?」
「そうだな」
「雪!綺麗!」
目下に広がる見慣れた街並みが、真白に染まっている