第1章 NO MUSIC,NO LIFE
そのあと、警備員が来るまで彼女と話した。
最近ギターを始めたこと。
11月の文化祭で弾き語りをすること。
その練習を毎日していること。
たくさん話した。
帰り道、話したりないからと言って近くの公園のブランコに腰を下ろした。
「君もギター弾いてみる?」
「いや、僕はいいです」
「そう?弾きたくなったらいつでも言っていいから」
「……いつでも?」
「いつでも私はあそこにいる。いつでも私は弾いている。だからいつでも遊びに来ていいから」
「はあ」
白い歯を見せて笑うさん。
太陽みたいな人だ。
心臓がトクンと笑ったのがわかった。
「そういえば、今日中庭でギター叩いてましたけど、何かあったんですか?」
「ああ。ただね、ちょっと悪戯されただけ。平気」
寂しそうな横顔をみてなんとなく察した。
悪戯と彼女は言っていたけど、きっといじめられているんだろうな。
「さ、帰ろうか。もう9時回ってる」
公園の時計に目を移すと確かに針は9時過ぎを差していた。
公園で別れて、「また明日」と手を振る。
不思議な感覚だ。
自分がこんなにも人に執着するなんて思わなかった。
くすぐったくて、こそばゆくて、自然と口元が緩んでしまった。