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【企画SS】秋桜~君の知らない気持ち~

第1章 NO MUSIC,NO LIFE





バン!!

中庭で一際大きな音が聞こえた。
気になって音がした方向をみると、一人の女子生徒が楽器を上に持ち上げていた。
あれはアコースティックギターだろうか。

サウンドホールに何か入ったらしく何度も叩く。
しばらくその様子を見ていたら、はらりと一枚の落ち葉が地面に舞った。
異物が取れたことに嬉しそうに笑う彼女の横顔に僕、月島蛍は惚れた。

名前も学年もわからない人に恋をするなんてありえない。
しかもたった一度の笑顔で、だ。
僕は一体どうしてしまったのだろう。

午後の授業はまったく集中できなかった。






放課後、部活が終わって帰ろうとした時教室に忘れ物をしたことを思いだした。

「珍しいな。月島が忘れものなんて」
「僕も一応人間なんで」
「気をつけろよ」
「ツッキー、俺もついていこうか」
「一人で平気だよ」

小学生じゃないんだから、忘れ物くらい一人で取りに行ける。
僕は校舎の方に戻り、自分の教室に向かう。
その時、どこかの教室でギターの音がした。

とてもぎこちなくて下手くそだけど、でも心地いい音色。
何処から音がするのか気になって、僕は音がする方へ足を運ぶ。

音は二階から。
階段を上ると音が一段と大きくなる。
音は2年1組から聴こえてくる。

真っ暗な教室。
扉を静かに開けて電気をつけた。
いきなり明るくなった教室に肩を大きく揺らして入り口をみるその人と目が合う。
中庭にいた人だ。

「……っくりしたぁ」
「すいません。音が、聴こえたので……」
「ああ。ごめん。うるさかったね」
「いえ……」

沈黙が背中に刺さる。
何か話題がないかと考え込んでいると、先に口を開いたのは彼女の方だった。

「君、一年生?」
「あ、はい」
「名前は?」
「月島、蛍デス」
「月島……?バレー部の?」
「そう、ですけど」
「田中から聞いてるよ。生意気な眼鏡ノッポがいるって。そうかそうか、君が月島君か」

どこか嬉しそうに笑う彼女の僕の心臓はムッとする。
田中ってあの田中さんだよな。
坊主頭でうるさくて頭の弱い人。

「あなたの名前は?僕に名乗らせたんですからあなたも名乗ったらどうですか?」
「あはは、確かに生意気だ。私は。よろしくね」



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