第2章 相死相殺
再び乾いた音が私の右足を貫いた。
「っつ……!!」
「無駄口叩く暇があるならさっさと行く事をおすすめするッスよ」
そう言ってまた子は姿を消した。
私は右足を引きずって、屯所に戻る。
近藤の部屋はもうわかっている。
撃たれた腹を押さえ右足を引きずって、できるだけ物音を立てずに彼の部屋へ向かう。
襖を開けた、彼がちゃんと寝ていることを確かめる。
気持ちよさそうに寝ている彼の口から「お妙さん」と私じゃない人の名前が出ることが悔しい。
夢の中でさえ、私は貴方に見てもらえない。
腰に差していた刀を抜いて、彼に刃先を向ける。
「悪く思わないでね……」
そして彼の首めがけて刀を振り下ろした――――――。
カシャン。
それができたらどれだけよかっただろう。
私にはできない。
愛する人を殺すだなんて。
溢れる涙を止めるすべを知らなくて、私はただただ泣いていた。
すると、頭に温もりが伝わってきて、涙で歪む視界の中瞳を開けると、近藤が優しい笑顔で私のことをみていた。
ばれた……。
私が近藤を殺そうとするところ。
痛い。
痛い。
お腹も足も、そして心臓も。
全部が痛い。
「お前が攘夷志士だってことは初めから気が付いていた」
「え……?」
「トシに調べてもらったんだ。高杉一派の仲間らしいじゃねえか」
知っていながら私を傍に置いていたというのか。
なんでそんなこと……。
「苦しそうだったから救ってやりたくてよ」
"いい奴だろーが悪い奴だろーが手ェ差し伸べる。それが人間のあるべき姿ってもんだよ"
あの日の言葉が頭をよぎる。
涙がぼたぼたと頬を伝っては畳にこぼれた。