第12章 辺り一面の花畑
「フフ・・・・いいのよ、無理して「副長」だなんて呼ばなくても。「トシ」・・・・でしょう?」
ミツバさんはいたずらっ子のような無邪気な笑みを浮かべた。
『すみません・・・・』
「あら?どうして?」
『だって・・・・・』
「十四郎さんはあなたのことが大好きなんですよ?そーちゃんもね」
私はその言葉に首を振った。
『トシにとって・・・・・ミツバさん以上の人はいません。総悟にとっても・・・・・』
「そんなこと・・・・」
『トシは・・・・今でもミツバさんのことを想っています。総悟も・・・・一緒です。私はミツバさんの代わりに過ぎないんですよ・・・・』
そう言って笑った。
トシはたまにミツバさんの名前を呼ぶことがある。もちろん、無意識で・・・・寝言でだけど・・・・
総悟はあまりわからないが、ミツバさんのことを忘れた日なんてないだろう。
『・・・私じゃなくて・・・・ミツバさんが生きていれば・・・・』
「それは違うわよ」
ミツバさんは真っ直ぐに私の顔を見る。
「私はとても幸せだった。それは今でも変わらないわ。でも、瑠維さんは、もっともっと幸せになっていいの。今まで苦しんできた分、いっぱい幸せにならないと」
『ミツバさん・・・・・』
「十四郎さんもそーちゃんも・・・・罪な人ね。こんな美人さんを泣かせるなんて・・・・」
そういってミツバさんは私の頬を撫でた。
いつの間にか泣いていたようだ。
「あなたは生きて幸せになって?」
『・・・・・私は・・・・幸せになるんじゃない』
私の言葉に驚いたような表情になる。
『私が、幸せにします。トシも総悟も・・・・』
ほほ笑むとミツバさんも返してくれた。
『でも、私はトシの一番にはなれません』
「え?」
『だって、私の前にこんなに綺麗で優しい女の人と付き合ってるんですよ?』
冗談交じりにそう言う。
「だから、あなたは元の世界に帰らないとね?」
『・・・・もう少しだけ話していたいですけど・・・・』
私たちは立ち上がる。
先ほどまで居心地のよかったこの場所が、今では何とも思わない。