第8章 昔の味方は今日の敵
ジミーがやられて、しばらくが経った。
隊士のみんなは殺気立っていて、トシや近藤さんには近づきがたいほどだ。
そんな空気に耐えかねなくなり、私は巡回に出る。
街中をぶらぶら宛ても無く歩きながら周囲に眼を光らせる。
幾分か歩くと、私は笠の男と肩がぶつかった。
『あ、すみません。ボーっとしていたもので・・・・・』
私が軽く会釈をし、謝ると、男は首を振った。
「いやいや・・・・・こちらの方こそ・・・・・。あなたに見惚れていた所だったんですよ?
ねぇ?瑠維ちゃん?」
いきなり笠の男が木刀を振り上げた。
私は刀を抜くと、木刀を受け止める。
「へぇ・・・・・・強くなったね。小さな頃とは違うってことかな?」
この男の声には聞き覚えがあった。そして、私を「瑠維ちゃん」だなんて変態混じりな呼び方をする人は、あの人しかいなかった。
『・・・・当り前じゃないですか。そっちは・・・・・相も変わらずバカ強いですね・・・・真太郎さん』
凄い力で押される刀を何とか両手で支える。
笠から見える赤い瞳はどす黒い血のようで・・・・・・
見るだけで吐き気がする。
真「あれ?どうしたのかな・・・・・顔色が優れないようだけど・・・・・・」
笑いながら更に木刀に力を込めてくる。
私は木刀を薙ぎ払い、真太郎さんとの間を開けた。
骨が軋むような音を上げていた。痛む腕を庇いながら、刀の切っ先を真太郎さんに向ける。
『今さら何の用ですか?私に関わる必要性はないはずです』
その問いに、真太郎さんは声を上げて笑った。
真「あるからこうして、瑠維ちゃんの目の前にいるんだろう?なぁ・・・・・俺達を裏切って、幕府の犬になるってのはどういう気分がするものなんだ?」
やっぱりそのこと・・・・・・
裏切った・・・・・傍から見れば、まぁ・・・・そうなるか。
『裏切ってなどいません。私は大切なものを護るためにここにいるんです。先生の護ろうとしたものを護っているのにすぎません』
真太郎さんは笠を取った。
切れ長の赤い目に黒髪の短髪。柄の悪そうな雰囲気はあるが、顔立ちはとてもよく整っていて・・・・・・・
そして・・・・・・
トシにそっくりだ。