第32章 朧ともいはで春立つ年の内
土方side
ルイ・・・あの女の話は、万事屋に聞いた。
瑠維の存在を思い出したのもあの野郎のおかげ。
瑠維の言葉には誰しもが感化され、行動を共にしようとする者が多かった。
それを利用しているのはあの女。
そう、利用しているはずだった・・・
『どういうことだ、こりゃぁ・・・』
ルイのために集まった警察組織。
その全勢力が、近づくことが出来ない。
いや、正確に言えば近づこうとしないのだ。
集まった男たちが、瑠維の通る道を開けていく。
全員が刀を構えている中、そんな中を鞘に手をかけることもせず、ただ歩いていく瑠維。
その光景は、異様。
全員の額から冷や汗が湧き出る。
刀を構えている手が震える。
膝が立っていることに悲鳴を上げ、今にも崩れ落ちそうなほど。
『・・・不二磨・・・ルイは?』
いつも通りの無邪気な笑顔。
でも、その瞳は赤。
いつも通りの立ち振る舞い。
でも、放っているのは
大男どもを
武装警察に指の一つも動かすことを許さない
人と呼ぶには異常な
殺気