第31章 願ふ事あるかも知らず火取虫
あちらこちらで真選組の隊服を目にする。
大方、私を探しているのだろう。
別に逃げも隠れもしない。
・・・が、ジミーに会うまでは別だ。
ジミーの入院している病院に着くと、受付へと向かった。
面会用の名簿に名前を書く。
偽名はあえて使わない。
病室は新八くんに聞いていた。
特別な理由のため、個室にいるらしい。
意識はないが、命に別条はない。
そうは聞いていても、自分の腹の虫の居所は悪い。
病室の前に着くと、中から声が聞こえた。
ほんの少し戸を開き、覗き見ると原田さんがいた。
原「またあの女ですか・・・ったくよぉ、どうしてたかが女一人にこんなに振り回されにゃあならんのですか」
・・・誰かと一緒なようで、相手に話しかけている。
原田さんが少し動くと、その相手が露わになった。
土「相当なやり手だな・・・隊士たちはいきり立ってやがるし、万事屋にはいねぇし・・・」
女一人に振り回されてるって・・・それ、あっちに言ってくれる?私は元々真選組の隊士・・・つーか、参謀ですからね?
しばらく待ってみるが、帰る気配は一向にない。
小さく舌打ちをし、出直そうと向きを変える。
原「にしても・・・このボイスレコーダーの暗証番号なんですかね?」
土「どれだけ試しても切がねぇ。山崎も、もっと解かりやすい数字にしとけばいいものの」
「ボイスレコーダー」その単語に私は反応した。
先日、ジミーが謝罪に来たときに渡しておいたのだ。
何かあったらこれに吹き込め、と。
暗証番号は私とジミー以外は誰も知らない。
番号は・・・
『1031』
何故この番号にしたかって?
スラムダンクを見てる人ならわかるだろう。
なんとなくこの番号が浮かんだだけでもある。
ロックがかかっていると言うことは、それなりに収穫があったのだろう。
死に際に、良い事するじゃないか、えらいぞジミー。