第31章 願ふ事あるかも知らず火取虫
銀時side
『どういうことよ、それ!!』
部屋いっぱいに瑠維の怒鳴り声が響き渡る。
肩は怒りに震え、瞳は赤々と染まっている。
銀「瑠維、落ち着け。新八が話せねぇだろ」
山崎の容体を伝えに来たのは新八だった。
新八はお妙から、お妙はあのゴリラから
そんな伝言ゲームが瑠維に伝わった。
新「ぼ・・・僕も姉上に聞いた話なんで詳しいことはわかりませんが・・・山崎さん、誰かに刺されたみたいで・・・」
『刺さ・・・まさか、あの女・・・』
瑠維は今にでも飛び出していきそうだ。
だが、それを自制心でなんとかとどめている。
新「おそらく間違いありません。山崎さんを襲った犯人は瑠維さんということになってますし」
握りしめている瑠維の拳がぎりり、と音を立てた。
まさかそこまでするとは思ってなかった。
瑠維、やっぱコイツは勘が鋭い。
『・・・て事は、ここにいると皆を巻き込んじゃうってことね』
しばらく無言だった瑠維がいきなりそう告げた。
何かを決めたような、強い声音だった。
銀「・・・何する気だ」
神「瑠維、一人じゃヤバいネ!相手は警察アルよ!?」
今までの瑠維の信頼を引き継いでいるというなら、事態は最悪だ。
『じゃ、私は行くね。トシたちが来たら、ふらっとどこかに行ったって伝えてて』
銀「ほんとはどこに行く気だ?」
俺の問いに瑠維は答えず、玄関の引き戸に手をかけた。
銀「無茶はすんなよ」
『・・・わかってる』
低く呟くと、一気に戸を開けた。
眩しい朝日が入りこんでくる。
後ろ手で瑠維は戸を閉めた。
その音が俺にはやけに重く響いた気がした。