第30章 三日月の水の底照る春の雨
山「・・・監視じゃありません」
ジミーは降りてくるなりそう言った。
そしてそのまま・・・
山「すいませんでした、瑠維さん!!」
土下座。
この行為には私たち四人とも度肝を抜かれる。
山「俺、思い出したんです!瑠維さんのこと。気を失って運ばれてる途中、ずっと違和感があって、それで・・・」
『・・・思い出した・・・って、私を?』
三人に代わって、私が尋ねると、ジミーは小さく頷いた。
『ほ・・・ほんとに?』
山「はい・・・って、ほんとすみませんでした瑠維さん!!」
半泣きになってしまった私に、ジミーは何度も謝る。
銀「・・・まあ、よかったな瑠維。つーことであのマヨヤロー殺してきていいか?」
新「ぎ・・・銀さん!ダメですよ!てか普通にダメです!」
銀時は未だに怒り狂っているが、私的にはどうでもいい。
思い出してくれた、ということは、他の人にも希望があるということだ。
『ジミーは、どうやって思い出したの?』
山「え?えと・・・あの」
いきなり話が振られると思ってなかったのだろう、目を左右にせわしなく動かしている。
山「俺は、何度か見たことのある光景を思い出したって言うか・・・」
『たとえば?』
山「旦那におぶられてたり、副長の後をついて行ったり・・・」
ちょっと待たんかい!?最後のは違うでしょ!人を金魚の糞みたいに言うな!!
山「そんな感じですかね」
『一回見た光景・・・じゃなくて、何度も見た光景・・・か』
銀「まあ、俺と飲んでて潰れたこと数えきれねぇもんな。酒強ぇくせに加減できねぇからな、お前」
銀時が呆れたように私の髪をぐしゃぐしゃと撫でる。
『でも、皮肉だよね』
山「何がですか?」
『ジミーのこと、お気に入りではあるけど・・・彼氏が一番に思い出してくれないなんて、最悪』
別にわかってますけど。
意外にヘタレだし、私の事好きなのかどうかよくわかんないし、なんか体だけっていうか・・・
銀「瑠維、お前なんで半泣きなの」
『うるせぇ、ちょっと目にゴミが入っただけ!』