第29章 白牡丹月夜月夜に染めてほし
拷問部屋へは指で数える程度にしか入ったことがなかった。
拷問器具を指でなぞりながら、トシはこちらに怪しげな笑みを見せた。
土「吐くつもりがねぇんなら、吐かせるまでだと思わねぇか?」
聞いたことのない低い声だった。背筋に冷や汗が流れる。
『・・・そうね』
土「物分かりがいいやつは嫌いじゃないぜ」
乱暴に髪を引かれ、地面に倒される。
初めてだ。
こんなにもトシが怖いと感じられたのは。
私の着物にトシの長い指がかかる。
土「おめぇみたいな女は、痛みにゃ強ぇが、快楽にゃぁ弱ぇ」
それ、前も言われたような気がする。
でも、今みたいに下げずんだ声ではなかった。
『・・・彼女、いるんじゃないの』
土「・・・わかってくれる、アイツなら」
そのアイツって・・・
あのルイって女?
それとも私?
私にはわからないよ。
乱暴に上半身を下着のみにされる。
こんなこと他の女にもしてたの?
鎖骨をゆっくりとなぞられる。
嫌だ、心からそう思ってるのに。
体がそれを拒否しない。
この触れられた指を
振り払ってしまうのが惜しいと思っている自分がいた。
『っ・・・ぅ・・・』
流れてくる涙。
悔しさなんかじゃない。
本当に、私は忘れられてしまっている。
ここに来た女に、少なくともトシは同じことをしていた。
そして、今から私もそれをされる。
私はトシにとって、どうでもいい
傷つけてもいい存在になってしまっている。
辛い
涙で歪んでしまった視界に見えるのは
鋭い風貌をした男。
私の知らないトシ。
私は忘れてもいい存在だったってこと?
『も・・・やめて・・・』