第29章 白牡丹月夜月夜に染めてほし
「そうよ!あなたは行動力もあって、人望も厚い!頭もよければ、腕も立つ!顔だってスタイルだって・・・私は何一つ勝てやしないの!」
『だからこんなことしたってわけ?はっ、それがくだらないのよ』
そんなことに巻き込まれる私の身になってほしい。
「くだらなくたっていい。これで私はトシの彼女。ずっと私を愛してくれる。他の人たちもそう、あなたへの信頼が大きい分、私を裏切らないし慕ってくれる」
『よかったじゃない。でも、あなたがこのままならその信頼もすべて消え失せるんでしょうけど』
元は私が作り上げたもの。人が変われば行動も考えも変わる。
「守って見せるわ。だからそのためには、あなたに大人しくしててもらいたいの」
『頼みを聞くような人間じゃないでしょ?私は』
そんな頼みなら、なおさら聞けない。
「トシも言ってたでしょ?大人しくしないなら力尽くで」
『私に力尽くって言葉が通用するなんて思ってんだ。おめでたいこと』
相手の顔つきはどんどん厳しくなっていく。
私はその分、笑顔で返す。
「・・・残念ね」
言葉を言い終え、顔をあげたルイ。
その顔は、今までとは違い、勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「力尽く・・・って、私じゃないわ」
『じゃあ・・・誰?』
「あなた、男が苦手よね。でも、トシなら平気。なら・・・」
トシが無理やりあなたを襲ったら?
笑顔で告げるルイに私は言いようのない恐怖を覚えた。
『・・・どういうこと?』
「・・・さぁ?あとはお楽しみってこと」
ルイは、じゃあね、と一言言い残すと部屋から去って行く。
私の握っていた手はびっしょりと手汗で濡れていた。