第29章 白牡丹月夜月夜に染めてほし
原田さんが部屋から出ていってしばらくたつ。
暇で暇で仕方がなかったので、腰までとはいかないが、肩甲骨のあたりまで伸びた髪の枝毛チェックをしていた。
夢中になって探していると、何かが聞こえてくる。
「大丈夫ですって、問題ないですよ」
「っつってもなぁ・・・」
「副長、本当に大丈夫ですから。ね?」
大方、トシとルイの会話だろう。
よくもまぁ、ぬけぬけと・・・
話はすぐに切り上げられたようで、部屋に女が入ってくる。
「今からの会話は誰も聞いてません。近藤さんも総悟も・・・もちろんトシも聞いてないわ」
「トシ」そこだけ強調するように女は言う。
「さてと・・・初めまして瑠維さん。私は不二磨ルイ」
『あなたの名前は知ってる。どうなってんのか説明してくんない?』
苛立つような声音でそう告げた。
女はウェーブのかかった淡いピンク色の髪を大切そうに撫でえいる。
「どうなってる・・・と言われても、この通りよ」
『まあ、それは見ればわかる。じゃあ、質問変える。どうしてこんなことした?』
どちらが事情を聞いてるのか・・・というよりも、立場が逆転している。
「・・・私は天人なの。人の記憶を書き換えることが出来る。特殊な催眠波でね」
『それもだいたいわかってる』
「私はね・・・トシが好きなの」
・・・はぁ!?ちょっと、意味不明なこと言いだしたよ?
「ずっとずっと好きで・・・追いかけてた。いつか私を見てくれる、好きになってくれるって・・・でも」
『私がいる』
「・・・そう。あなたは後から来たのに、すんなりトシを浚っていった」
何それ・・・
なんだ・・・つまんないの。
『なんだ、結局醜い女の嫉妬ってやつ?くだらない』
「くだらない・・・?それは、あんただから言えるのよ!」
ルイは思い切り立ち上がった。
そのはずみで椅子が倒れる。